第612話 再戦の開戦


 アスカトルと戦うのは実はこれで二回目だ。


 俺が森に入った時に、アスカトルとなる前のグレイテストスパイダーに遭遇し、アスカトル自身に俺の動きを拘束され、何度も殺された。


 こちらとしては俺の死亡数を増やしてくれたし、麻痺の魔眼をゲットできたしでなんだかんだ結果的に大満足の結果に終わったイベントだった。


 しかし、その時に大小様々の大量の蜘蛛に襲われたのは地味に嫌だった。身体中を喰らい尽くされて死ぬのなんて気分のいいものではない。


 ま、今となっては個性のある優秀な配下になってくれたから不満の一つもないんだけどな。


『こうして合い見えるのはいつぶりだろうな。お互い強くなったことだし、あの時の続きといこうか』


『私もご主人様のおかげでかなり強くなりました。だからこそ、ご主人様を超えるっ! キシャ』


 うん、カッコいい決意の籠った宣言なのは確かだ、確かなんだけど、どうしても微笑んでしまうんだよなー。


 こればっかりは仕方がないからなー、切り替えるしかない。


『初手はアシュラ同様お前にやろう、全力でかかってこい!』


『キシャッ!』


 ん、それは、この鳴き声はつまり、、何も言ってないってことなんだよな? 


 っと、余計なことを考えていたら危うく足を取られるところだったぜ。


 俺はその場でジャンプし、足元に迫っていた蜘蛛の糸を回避した。だが、アシュラ同様、それだけではなかった。


 俺がジャンプしたタイミングを見計らって更に糸を放射してきた。それも、一本だけでなく、ざっと見て五本以上、これが本命ということか。でも、


「【天駆】!」


 ちょっとずるいかもしれないがこれが俺の、魔王のやり方だ。そう思い、俺は勝ち誇ったドヤ顔をアスカトルに見せようとしたのだが、


「なに?」


 そこにアスカトルの姿がなかったのだ。どうやら、今の糸の攻撃の全てか陽動で、自分の姿をくらますことが目的だったようだ。


 俺がこれくらいで捕まらないことくらい、織り込み済みのようだな。流石、カトル、賢いな。


 だが、姿を隠した程度で俺を欺けると思ったら大間違いだ。


「【叡智啓蒙】」


 俺はスキルを発動し周囲の気配を探る。すると、


「え?」


 なんと、そこかしこに気配の反応があったのだ。なんと、カトルはここまで計算通りだったようだ。


 流石、暗殺や偵察担当で、隠密、奇襲が得意なだけはあるな。まるで忍者のようだな。


 忍者でかっこいいくせに、語尾がアレとかもう最高だな。


 だが、これしきで魔王を討ち取れると思ったんなら、俺も甘く見られたもんだな。


 この沢山の気配は恐らく、アスカトルが生み出した配下なのだろう。だが、アスカトルと配下で気配が全く一緒なはずがない。


 そこが狙い目だな。感覚を研ぎ澄まし、情報を精査していく。きた、


『そこだっ! 全力ローキック!』


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