第609話 アシュラビート

本来は昨日言うべきだったんですが、レビューいただきました!!

とても嬉しいです!これからも頑張ります!!

——————————————————


「くらえ、全力正拳突き!」


『グハッ!』


 俺はアシュラの鳩尾に一発、いいのを決めてやった。これで倒れてくれれば俺の格好もつくんだが……


『さ、流石はご主人様、でも、ここからが本番っ! 【アシュラビート】!」


 ドクンッ、という音がこの会場に響き渡った。


 その鼓動のような音とともに、アシュラの姿が変化した。その姿は正しく阿修羅と呼ぶにふさわしく、体が血が滾るような赤に緋色に染まっていた。


 そして、それからの猛攻は今までとは段違いのものだった。今までの法則を一切無視した拳による波状攻撃が繰り出され、一度に必ず四つ以上の拳が降りかかってきた。


 悪鬼羅刹、そんな単語が不意に俺の頭をよぎるほどの迫力と恐ろしさで俺を瞬く間に追い立ててきた。


 さすがにこれには俺もパリィどころではなく、ただ避けるのに専念するのに必死だった。それでも、死角からくる拳を受け切れず、食らってしまうことさえあったほどだ。


『くっ、やるじゃねーか、アシュラ!』


 これほどまでに強くなっているとはな。弱いと思っていたわけではないが、予想を遥かに上回ってくれたようだ。魔王としては嬉しい限りだ。


 だが、もちろん勝負を捨てたわけではない。というか、このスキルをアシュラが使った時点で俺はもう勝ちを確信していた。


 なぜなら、こういう類のスキルは俺も身に覚えがあるのだが、基本的にスキルの効果時間というものが定められている。そして、これほどまでの力を得られるスキルが、ノーリスクというわけがない。


 以前持っていたバーサークや逆鱗、怒髪衝天がこの類だろう。そいつらは使うに当たって必ず何らかの制限があった。そして、それは例え阿修羅の名を冠していたとしても変わらぬことだろう。


 つまり、俺はこのスキルで倒されなければ良いということなのだ。


 そして、俺はただいま、阿修羅の猛撃の嵐の真っ只中にいるのだが、それでもやられる気配が感じられない。


 つまりはそういうことだ。


『はぁ、はぁ、はぁ、やはりご主人様、いや魔王様はとても強い……』


 どうやら、効果時間が終了したようだな。アシュラの腕と顔が一人前になっている。これがこのスキルのリスクということだろう。


 ん、こうしてみるとほぼ人じゃねーか、ってかイケメンだなおい。元はスケルトンのはずだろ? なんでこんなにイケメンなんだよ、おい! 少しは分けろよ!


 これは腹いせに少し意地悪をしてやろう、もうほぼ死に体のアシュラに向かって俺は、拳を引いて構えをとった。


「全力正拳突き、リターン!」


 ブフォォオオオン!


 俺はアシュラの顔面に向かってさっきよりも気合のこもった正拳突き(寸止め)を放っていた。


 思ったより、風圧が発生してびっくりした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る