第606話 王として


『全軍に、告ぐ! 今すぐ魔王城、最上階に集まること、繰り返す、今すぐ魔王城、最上階に集まれ!』


 よし、これでいいだろう。今から第一次天魔大戦に向けて指示を出していく。


 プレイヤーの力は借りずに、されど天使にも屈しない。必ず魔王軍の勝利で収めるのだ。


 最悪、ヤバそうだったら俺が一人でゾンビアタックすればいいだけだからな。まあ、体裁とか考えたら絶対にしたくはないが。


 ❇︎


 目の前にいるのは、ハーゲン、スカルボーン、アシュラ、シュカ、ペレ、アイス、デト、ゾム、海馬、そして堕天使達だ。


 コイツらが俺の直接的な支配下にいる、俺の従魔だ。他にも魔王城には住民がいるが、あくまで同居人だ。力は借りられない。


 つまり、この九名と一組、そして俺だけで天使を迎え撃たなければならない。


 正直言って、コイツらが揃って負ける未来は見えていない。


 ただ、運営がわざわざイベント、しかもプレイヤーも参加できる形にしているとということから、今のままでは俺らが勝てないことが示唆されるのだ。


 だが、運営やプレイヤーに手助けされて勝つというのは少し気に入らない。だからこそ、俺らだけの力で勝つのだ。その為のこの集会である。


『お前たち、近々、天使が我らを襲撃してくるという報せが入った。つまり、魔王軍の初陣ということだ。

 期間は今から一ヶ月間だ。我らに敗北の二文字はない。必ずや勝利をもぎ取るのだ!』


 うん、みんな急な報告だけど、目がキラキラしてる。そんなに戦いに飢えてたのかな? え、うちの軍ってそんなにバトルジャンキー多かったの?


『だが、単に頑張れ、ではつまらぬだろう。そこで私は既にお前たちに褒美を用意しておる。戦で見事活躍できた者にはそのまま褒美を、できなかったものは、それを没収する。そして、その褒美は、これだ』


 そう言って、俺はあるものを見せた。


 そう、爺さんに作ってもらったあのエンブレムだ。


「「「「「……!!」」」」」


『これはお前らに割り当てて作ったエンブレムだ。これをつけて戦にはでてもらう。期待以下の働きをした者は剥奪するから、そのように、天使達はまた今度用意するからそのように、』


 ふっふっふ、皆の目の瞳孔が開いているな。まあ、めちゃくちゃカッケーからなーこれ。


 しかも、一つ今の俺の言葉には仕掛けが施されている。


 それは「取り上げインセンティブ」と言う、先にご褒美を与えてそれを失うかもしれない、という状況に強制的に立たせることによって、モチベーションを極度に増大させるテクニックだ。


 これは人間にしか効かないかもしれなかったが、反応を見る限りしっかりと効果はあるようだ。


『もちろん戦までは私も協力しよう。皆、全力を出して天使共を討ち滅ぼすのだ!!』

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