第597話 天使との距離感


【攻贖他愛】‥このスキルを発動中、味方が受けたダメージを自分に肩代わりする。


 あら、見た目の割には随分とシンプルな効果をしているんだな。もっと仰々しい効果があると期待していたんだが。


 まあ、シンプルでも効果は普通に強い。しかも、俺と相性が抜群だ。味方が受けたダメージを俺が代わりにくらってあげられるなんて最高だな、おい。


 俺なら死なないし、死んでも美味しい。完璧すぎるだろこれは、常備発動でいいんじゃないだろうか? そんなことしたら、適当に従魔達に特攻に行かせておけば自動強化システムの完成じゃね?


 あ、そうですか、連続使用時間は五分までですか、はい、わかりました。そこまで現実は上手くはいかない、と言うことですね。まあ、それでも十分だな。


「お、お主、これは凄いぞ! しっかりと悪魔の心臓と同じように高エネルギーを獲得できおったぞ! しかも悪魔と違ってより純度が高いんじゃ! これは、悪魔から天使に転向と言うのも悪くはないかもじゃのう」


 おいおい、何罰当たりなこといってんだ。それに、悪魔をこの人間社会から駆逐するためにこの研究を立ち上げたんじゃ無かったのかよ、ここで天使に転向したら本末転倒だろうがよ。


 ま、心臓を持ってきた張本人が何言ってんだ、っていう話なんだが。


 それに、実は俺からしても天使は平和ボケしてて戦いやすいっていうか、やりやすいからまあ俺としても簡単に強スキルが手に入るから結構、美味しんだよな。


「爺さん、もう一個くらい持ってこようか? エネルギーはいっぱいあった方が悪魔にも対抗できるだろ?」


「そ、そうじゃな。後一つくらいはあっても全然構わない、むしろ沢山持ってきてもいいくらいじゃ。まあ、体裁としては悪魔のにしてくれると良いのじゃが」


「じゃ、気が向いたら悪魔も倒しとくよ。とりあえず、後一個はとりあえず持ってくるわ」


「お、おう分かった。気をつけるのじゃよ」


 そう言われて爺さんにお見送りしてもらったんだが、正直に言おう。俺は強いスキルが欲しかっただけなんだ。


 前、選定をしていい感じになったけど、どこか物足りなさも感じてしまったんだよな。だから今度はスキルを滅茶苦茶に充実させてから臨みたいのだ。


 それに、悪魔と違って、一々爺さんに居場所を訊かなくてもいいから楽なんだよな。うん、改めて美味いよな。


 ❇︎


 そんなこんなで、ウキウキ気分でさっきの空中都市に到着した。すると、どうやら先ほどまでとは幾分、いやかなり雰囲気が違う感じがした。


 なんていうのだろうか。恐らくスキルの恩恵だろうが、危険察知的なものがビンッビンに反応しちゃってる、ここまでの反応は久しぶりじゃないかと思うほどだ。


 え、何かあったのか? 


「あ、」


 もしかして、俺がやらかしたからってことか? いや、流石にさっきことを起こしてからそんなに時間経ってないぞ? まだ発見されているかどうかすら怪しいと思うんだが……


 一応、警戒しておくか、一応な。あわよくば漁夫の利を狙いつつ警戒しておこう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る