第596話 主天使オリベル(別視点)


「ほぅ、空中都市において、権天使が何者かによって殺された、か。なかなか興味深いなそれは。下等な生き物の分際で、我らにあだなすとは万死に値する。全勢力を持ってその極悪人を見つけ出し、我の前に持ってくるのだ!」


「はっ、かしこまりました、主天使オリベル様」


 ❇︎


 私は主天使オリベル、主に天使達の監視を担っているものだ。まあ、監視とは行っても、愚行を犯す天使はいないため、皆を見守るだけのとても平和な役職だ。 いや、役職だった。


 今回、私がこの主天使の座についてから初めて、侵入者が現れ、一人の権天使を殺害していったとの報告があった。これは前代未聞の事件だ。私が出ないで誰が行くのだろうか。


 これは、私の戦いである。


「報告いたします。どうやらその曲者は堂々と門の方から侵入したようです。門番に差し入れと称して怪しい果実を渡し、状態異常をかけ、その隙にまんまと侵入された、とのことです」


「ほぅ、状態異常にかかってしまう怪しげな果実、か。もしや、権天使もその果実によってやられたのか?」


「いえ、違います。権天使様は心臓を抉り取られていた、と鑑識の天使が申しておりました。怪しげな果実に加えて物理的な攻撃手段も持っているようですね」


「そ、そうだな。ゴッホん。これは要注意人物だ、目撃者がいないか聞き込みを続けよ、また、また襲撃してくるやもしれぬ。その時は……我がいく」


「はっ、かしこまりました」


「我ら天使に喧嘩を売った罪、決して軽くはないと言うことを思い知らせてやろうぞ」


 ❇︎


「主天使様! どうやら例の曲者が姿を現したようです! そのものはなんと、なんと人間でありましたっ!」


「何っ!? 人間だと?」


 人間、それは我ら天使にとって、主の子供、つまり、守り育てる対象にある者たちのことだ。


 しかし、その人間から我らに歯向かう存在が現れるとはな……今回の件は悪魔の仕業かとも思ったが、人間の業はさらに深いと言うことか。恐ろしい。


 しかし、皆が皆、そうというわけではない。業が深いのはこの者のみ。つまり、この者を断罪することによって世界は平和に、人間たちにさらなる加護を与えることができるのだ。


「おい! 場所はどこだ! 私が向かう!」


「はい、今は潜伏の魔法を使っているようですが、我が部隊が抗魔の呪文を唱えていますので、視認はできます。対象は中央の広場へと接近中です!」


「念の為、近くの天使たちを避難させておくのだ。そして、もし、私が死んだ場合は直ちに楽上庭園に向かい、救援を要請するのだ、いいな?」


「はい、かしこまりました」


「では、行ってくる」


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