第595話 天使のスキル


 まさかこの世界で最も平和ボケしているのが、天使の住む空中都市の門番だったとは……


 それでいいような、ダメなような、そんな感じだな。しっかりして欲しいけど、天使なら平和ボケしていても仕方がない、そんな気はする。


 ……俺何いってんだろ、とっとと心臓回収して研究室に向かうか。どちらにせよ長居してたら見つかる危険性は増すだろうからな。


 よし、とりあえず大きくて豪華な建物を探して、その最上階の方に侵入して、偉そうな天使の背後に降り立つ。うん、まだ気づかれてないな。


 そして、心臓に向かって、手を突き刺す! はい、これで新鮮な心臓の確保に成功した。後は、天駆でダッシュ、そしてある程度距離を取ったらハーゲンで急降下からの、そのまま研究室に向かう。


 あれ、意外と余裕だったな。これだったら今度は楽上庭園に行ってみてもいいかもしれないな。


 ❇︎


「ごめんくださー、へぶっ」


 いててて、そういやこの研究室地下にあるの忘れてたな。頭から落ちたんだけどどうしてくれんだよ。


「おぉーお主! 久しぶりじゃのう。もしや悪魔の心臓を持ってきてくれたのか?」


「あぁ、いや、心臓っちゃ心臓ではあるんだが、、まあ、とりあえずこれをみてくれ」


 そういって、俺は鮮度抜群の心臓を懐から取り出した。


「お主、これは……? 悪魔の心臓ではないのか?」


 爺さんはそう言いながら俺の答えを待つこともなく、機械にそれを通していた。まあ、俺の言葉よりも機械の結果の方が信用はあるからな。うん、寂しいけど。


「なっ!? ま、まさかこれは天使の心臓、ということなのか!?」


 あ、そういえば、悪魔は人間を敵対しているんだろ? ってことは天使は信仰の対象になっていたりしてないのか? 俺、大丈夫かな? 社会的に抹殺されたりしないよな?


「そ、そうだが、何か不味かったか?」


「い、いや別に天使だからといってダメだということはないが、この世には天使やその神を崇め奉っておる人たちもおるから、気をつけることが必要じゃ。だから、誰かれ構わずこの事実を言うのは少し危険かもしれんのう」


「へぇー、そうなのか。知らなかったぜ、ありがとうな。それより、スキルはこれからもゲットできるのか?」


「それよりって……まあ良い。天使の心臓からも悪魔同様にエネルギーを取得できるようじゃし、問題なくスキルも手に入るじゃろうて」


「おー、そうか、それならよかった」


 俺の手間隙も無駄では無かった、と言うことだな。もし、良いスキルが手に入ったら、天使の乱獲も視野に入れておかないとな。


「ほれ、これがスキルじゃよ」


 そういって、俺に渡された巻物をスルスルと解いていくと、そこに記されていたのは……



ーーースキル【攻贖他愛】を獲得しました。


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