第593話 心臓を捧げよ


 唐突に現れた大天使ハミュエルとその仲間たちだったが、なんとか倒すことができたようだ。


 っていうか存外骨無し野郎だったな。天使は悪魔よりも弱いのだろうか? まあコイツが天使の中で一番強いってこともなさそうだし、悪魔と同様くらいがあるのだろう。


 そんな風に天使たちに思考を巡らせていると、俺は大変なことを忘れていることに気づいてしまった。


「あ、お前」


 そう、残党がいたのだ。しかも、一対一というとても気まずい状況だ。


 それに、コイツがどう思ってるかは知らないが、味方を殺した挙句、いざ、上司から殺されそうになったら自分を庇うという、思考回路が謎で変な奴だもんな俺。


 え、どうしよ。なんかこっち見てるし、これなんか言った方がいいやつか?


「おい、名はなんと言う? 行くあてはあるのか?」


「お、お前! 何故この私を庇ったんだ! もう私に帰る場所などない。帰ってもどうせ袋叩きにあうだけだろう。貴様が、貴様が私たちを誑かしたせいでな!」


 わお、だいぶご立腹だな、おい。まあ、俺のせいだから仕方がないけどな。だが、


「名はなんと言う?」


 まだ、質問に答えてもらってない。今度は少し圧を出して聞いてみた。無視されるのはいただけないからな。


「っ……! 私の名はキコエル、天使三銃士の一人だ」


「そうか、キコエル、では私の元に来るがいい。あ、これ拒否権はない奴だ」


「は?」


「【服従】」


 なんか、途中からもうコイツは服従するって決めてた。なんか、俺が庇った事実とか隠蔽したいし、どうせ死ぬなら俺の役に立って欲しいからな。だから名前が知りたかっただけなんだよな。


「天使の服従に成功しました。名前をつけますか?」


 んーコイツの名前が聞こえるだから、候補は今のところ二つだな。聞かざるか、聞こえない、だな。なんかコイツを配下に入れるんなら他のメンバーも入れたくなってきたな。


「【蘇生】、【服従】」


 なんか、自分で殺しておいて蘇らせるとかどんなクソ野郎だよって思わなくもないけど、まあ気にしちゃダメだ。俺は堕天使三銃士を結成するんだ!


 ❇︎


「はい、じゃあお前はミエナイ、イエナイ、キコエナイだからな。みんなこれからよろしく頼む」


 うん、蘇生した時はびっくりしてたけど、服従したら落ち着いてくれたようだ。よかった。


 ってか、天使も服従できるなら悪魔もできるってことだよな。そんなことならしておけばよかったな。心臓に気を取られすぎていたな。


 ん、心臓? 天使の心臓……!?

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