第592話 試運転と改善点


 目の前の、自分が天使だと名乗るその者はいかにも自分が偉いのだと自負しているような、そんな輩だった。


 アニメや漫画でよくあるところの、自分はさして強くないのに、所属しているところの権威を借りまくって何故か一番偉そうにしている感じだ。


 あ、まあ、さして強くないかは知らないが、絶対に強くないだろコイツ。三下感が目に見えてるぞ?


 よし、三下ならやっちゃっていいか。選定したばっかりのスキルとかも色々使ってみたいしな。


 ただ、ここは空中だ。相手の領域だからそこだけは注意していこう。


「貴様ら、やってしまうのだ!」


 うわ、手を下すのも文字通り手下にやらせるのか……もう、三下感しかないぞ、コイツ。大丈夫か、こっちが不安になってきたぞ。


「私はミエル!」

「私はイエル!」

「私はキコエル!」


「「「三人揃って天使三銃士だ!」」」


「……」


 これは不味いぞ。三下の部下がもう雑魚臭しか漂っていないとは何事だ。やはり、この上司にしてこの部下あり、と言うことなのだろうか。


 もう、やってしまおう、これ以上見てても何もないだろうし、さっさと終わらせてやるのも向こうの為だ。


「【魔王勅命オウノチョクメイ】、お前ら三人で戦え」


 俺が選定でゲットしたスキルを使ってみると、三下の部下の三銃士達はなす術もなく、目を虚にさせて互いを攻撃し始めた。


 魔王勅命、結構強いな。こうやって同士討ちさせるのにも使えるだろうし、一対一で実際に俺が戦っている最中とかに動きを止めたり、逆に変に動かしてみたり、色々と使い道はありそうだ。


 このスキルの使い道を考えていたら、どうやら三銃士達の戦いは終わっていたようだ。最後に残ったのは何エルだろうか、聞いていたけど覚えてない。


 ソイツの虚になった目はもう元通りになっており、今は自分が犯した現実に動揺しているようだった。これは早く解放してあげないとな。うーん、どうやって殺そうか。


「なっ……!? グフォっ!」


「ほぅ、今まさに私の部下をそそのかし堕落せしめた貴様が其奴を庇うと言うのか。面白い、貴様諸共断罪してくれるわ!」


 今、起こったことを説明しよう。俺が魔王勅命で同士討ちをさせた後に俺がどうするか悩んでたら、大天使の方が、天使を殺そうとしたのだ。そして、俺がそれを庇った、という感じだな。


 普通、上司は何があっても部下を守る者だろう? 少なくとも俺はその心づもりなんだが、コイツは俺のせいとはいえ、躊躇いなく部下を殺そうとした。


 俺が助けたのは……なんとなく、だ。俺のせいで上司から殺されるのなんて、少し可哀想って思ったのかもしれないな。


 まあ、それは後の話だ。今は、目の前の罪人についてだ。部下を見殺しにするだけでは飽き足らず、自らのてで殺そうとした罪を償ってもらおう。


「【断罪絶刀】」


 大天使ハミュエルは一刀両断にされ、灰になり消えていった。


「ふぅ、」


 俺も配下を守る為のスキル、何かゲットしないとなー。毎回、体張るのはキツいからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る