第588話 アイツと魔王(別視点)


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 ようやくエンペラーオークを倒すことができたぜ。全く、攻撃力も素早さも大したことはねぇが、体力が馬鹿みたいにあったな。


 まあ、俺の力の前には流石に自慢の体力も尽きてしまったようだがな。


 だが、戦ってみて感じたことが二つある。


 まず一つ目は、まだまだ俺はやれる、ということだ。これはまあ正確にいうともっとギリギリの戦いがしたいし、しなきゃいけねーってことだ。


 せっかく臨界点を迎えて死ににくくなったんだからもっと命が削れるような相手と戦わなくちゃいけない。もっと早く、もっと強くならなきゃいけねんだ。雑魚相手に足踏みなんかしてられねー。


 それと、もう一つが。アイツはもっと、まだまだもっと強いってことだ。あいつから感じた覇気のようなものはエンペラーオークのものを軽く超えていた。


 つまり、俺がコイツを軽々倒せてもまだまだというわけだ。手こずっているようじゃ論外すぎる。


 だからこそ俺はもっと、もっと強い相手と戦って強くならなきゃいけねー。それこそ魔王に挑むくらいじゃないとだ。


 魔王も映像で見たかぎりだが、あの時のあいつ以上のオーラを持っていた。まあ、かなり遠くて実際問題どんくらいかは分からねーが、遠くからでも分かるってことはそれだけやべーってことだ。


 つまり、その魔王に勝つことができれば、俺はアイツに勝てるってことだ。


 こうしちゃいられねー。早く次のモンスターを倒さねーとな。次は……そうだな、たまには気分転換に海の魔物とかと戦ってみてもいいかもな。


 次の相手はクラーケン、お前だ。


 ❇︎


「ぷはっ!」


 くそ、海の中ってこんなに戦い辛いのかよ! 一箇所に留まるだけでもきちーのに、あっちに行ったりこっちに行ったりやってらんねーぞ! ここは一発でかいのかますしかねーみてーだな!


 タイミングをみ誤るなよ、相手が近づいてきた時にカウンターの一撃を決めてやる。……今だっ!


「【大地裂斬】っ!!」


 俺の渾身の一撃は俺に近づいてきたクラーケンの頭部に直撃し……


「なにっ!?」


 効いてない、だと? 俺の必殺技が、擦り傷もつけられなかった、だと?


「ぐはっ!」


 まさしく、全身全霊で放った俺の一筋が無に帰せられ、俺はそのままクラーケンの足に絡め取られ、捻り潰されてしまった。


 くそ、こんなところで俺は止まれねぇってのによ! もっと、もっと俺に力があれば!


 そうだ、、臨界点、臨界点を迎えよう、そうすれば俺はもっと強くなれる!


 絶対に、絶対に俺はアイツをぶっ殺すからなっ!!


 そこで俺の意識は途絶えた。


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