第579話 エンブレム


 俺はいつもお世話になっている鍛冶屋に出向いていた。


 俺は、海馬の同居人を探す前にも実はここを訪ねていて、ある仕事を依頼しておいたのだ。その依頼とはこの魔王城を防衛するに当たってとても重要な鍵となることだ。


 そう、エンブレムの作成とその装備品の調達だ。


 魔王、と名乗るからには魔王軍が存在し、魔王軍が存在するからにはそれを証明するものが必要になってくるだろう? だからこうして用意してもらったってことだ。


 流石に内容は明かさなかったが、軍隊を作ったので、かっこいい印を作ってくれと言っておいたのだ。それに対して爺さんは無駄な詮索をしてくれずに、二つ返事で了承してくれた。流石は長い付き合いなだけはある。


 そして出来上がった完成品が今、目の前にある。端的に言おう、クソかっこいい。


 そうしてこうも毎度毎度爺さんは俺の予想をはるかに超える仕事っぷりを見せてくれるのだろうか? 俺としては感謝しなかないぞ、全く。


 恐らくは、お客様に最上のものを提供することでリピートしてもらうっていう戦法なんだろうが、そんなに気合い入れずに、もう少し手を抜いてもいいんじゃないか?


 俺だったら、それでも余裕でリピってそうだ。まあ、俺みたいな個人間の取引だけじゃなくて、もっと大気いいところとも取引しててもおかしくないからな。爺さんなりの信念なんだろう。


 爺さんのことはこのくらいにしておいて、エンブレムに話を戻そう。このエンブレムは非常にかっこいい。


 見た目は非常にシンプルで、九芒星の形をしている。だが、そこには少し変わった装飾が施されていたのだ。


 そのエンブレムは、九芒星の一つのとんがりにのみ色が塗られているのだ。しかも、全体を俯瞰してみると、場所がその色ごとに割り振られているように見えるのだ。


 つまり、これをつける者は自分に色が与えられ、場所も与えられるということなのだ。そして、奥に一つ眠るエンブレム、これは多分、俺がつけるのだろうな。


 色は時計回りに上から、金、銀、灰、紫、赤、空、緑、カーキー、クリスタルだ。最後らへんは汚かったとか、やる気がなくなったからじゃなく、自然とこういう色になったらしい。


 ただ、これは言うまでもなく非常にカッコいいのだ。付けているものはそれだけで言わずもがなの快感を得ることができる。更に、挑戦者からすればあれを全て揃えることができたら、魔王への挑戦が……とか思っているかもしれないから、


 あとはぶっ潰してやるだけですね、まあ、文句がある奴らは直接対決をしましょうかね、一人一分に敵を屠ればなんとかなるでしょう。まあ、明日からはプレイヤーも包んだ、盛大にあそぼう。

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