第578話 仕上げ


 遂に、遂に完成した。俺の、いや、アイスのゴーレム部隊だ。


 総勢三十体からなるアイスゴーレムからその部隊は構成されており、どいつも体がとても大きい。


 もう既に氷属性は付与されていて、皆強そうである。


 そしてその中で、一人異彩を放つゴーレムがいる。そうだ、俺、お手製のゴーレムだ。正直コイツが一番カッコいいと思っている。


 他のゴーレムは、ストーンゴーレムで、灰色がベースになっているのだが、コイツは土がメインだから茶色なのだ。その時点でかなり目立つし、何よりもカッコいい、刺青のような紫の紋様がかなりイカしている。


 そして、コイツの魂はなんとオーガの魂を採用しているのだ。ゴーレムを捕まえればいい、ということに気付いてから、ゴーレムの魂を使うのは二度手間な感じがしたから、どうせならと思い、思い切って挑戦してみた。


 そして、それが上手くハマってくれたようだ。ゴツい体に圧倒的なパワーを持っているオーガにこの体はとてもよく馴染んでいるようだ。


 それに、オーガにしたことによって動きがより機敏になり、より戦闘に適した動きが可能になった。まあ、そうは言ってもゴーレムの鈍重な動きの範囲内ではあるが、他のゴーレムと比べるとその動きの良さが際立つのだ。


 そんな部隊をアイスの階層に配置して、俺が満足気にその送還を眺めていると、唐突にピロンと通知音がなった。


 俺はその原因となる奴を見つけ出し、なんの気なしにそのメールを見た。すると、そこには驚くべき内容が記載されていた。


「な、マジ!?」


 どうやら、この文によると、俺の自己紹介から早一ヶ月が経つということらしい。そして、明日からこの俺の城が一般開放されるということらしい。


 不味い、不味いぞこれは。まだまだ城の半分も完成していないんだぞ? 人類の最強達が徒党を組み、イベントを邪魔した邪悪なる魔王の討伐を目標に押し寄せてきたらどうなるだろうか。


 その結果は見るまでもなく、この城の壊滅だろう。そして、その防衛拠点の城はまだ未完成、不味いな、非常に不味い。


 折角手に入れた城を手放したくはない。一日天下なんて恥ずかしいし、嫌だ。あんなに喧嘩を売ってしまった手前、普通に負けるのも嫌だ。


 よし、じゃあもし、アイスの層まで突破されてしまったら、俺が直々に出迎えてやろう、この城は絶対に渡さない。


 明日はそうだな、最後の仕上げをしよう。久しぶりにあそこに行こうじゃないか。


 ❇︎


「お邪魔しまーす」


 そこはいつも通りの暗さだった。ここはやっぱり変わらないなー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る