第577話 アイスの為に


 よし、次はアイスだな。アイスの階層に同居人を配置するのだ。


 んー、氷の魔物なんてそう簡単にいるものなのか? アイスとは何故か奇跡的に出会ったのだが、そう大量にいそうな感じはしない。


 それに、仮にいるとしてもどこに行けば良いんだ? 北極とか、南極みたいな場所がこの世界にはあるのだろうか?


 うむ、ここはいっそ作ってしまうのはどうだろうか、作れば外出する必要もないし、安上がりになるはずだ。


 それに俺ならなんとなく作り方は分かる。


 というわけでまずは見た目をつくろう。外観はアイスの小さくて可愛い、というのを強調する為に、大きくて厳つい、というものにしたい。


 大きくて厳つい、人造モンスターとなると個人的に思い当たるものは一つしかない。そう、ゴーレムだ。


 ゴーレムなら作るのも簡単そうだし、見た目に手を抜いてもそれらしくなるだろう。


 よし、ゴーレムを作ろう。ゴーレムを作るとなると、必要になってくるものは、石や土だよな。


 その石と土をゲットする為にはもちろんあれをしないといけない。そう、爆破だ。


「【爆虐魔法】、ダイナマイトボム」


 ッダーン!


 ……よし、これでいいだろう。少し範囲を広げ過ぎた気もするが、まあ、その分ゴーレムを作れば問題はない、はずだ。


 そして実際にゴーレムを作り始めようとしたところで問題が発生した。俺は、ゴーレムを作るには石や土を繋げる必要がある、ということを忘れていたのだ。


 不味いな、ゴーレムが完成すれば氷属性を強制進化で付与してあげればいいと思っていたが、それ以前の問題じゃないか。


 だ、だがまあ、氷属性にするところでゴーレムの強度は保たれる筈だろう。つまり、どんなに脆くてもいいから形さえ、作ることができれば、ゴーレムは完成するってことだ。


 よし、デトを呼ぶか。


『デトー、ちょっと頼みがあるんだけどー』


 俺の考えた作戦はこうだ。土や石にデトの毒液をぶっかける。毒液は放置してたら固まるだろうし、最悪固まらなくても、泥団子の要領で固めてやろうと思っていた。


 結果的には、いい感じに固まってくれた。これで本格的にゴーレム作成に取り掛かることができる。ここまではスタートラインにすら立っていなかったと思うと、気が遠くなるな。


 ❇︎


「よっしゃあ! これでゴーレム一号の完成だ!」


 長かった。とても長く険しい道のりたった。ひたすら土を固め、積み上げてはまた固め、を繰り返していた。


 このゴーレム作成のせいで何日か潰れてしまったほどだ。だが、この日数に見合うほどのモノが完成した。


 主に土からできた体には、紫色の筋が至る所に入っている。それはまるで紋様のようにすら、見え、本当にカッコいい。


 そして、まずは自立走行ができるように、魂を与えよう。んー、なるべく違和感がないように、ゴーレムの魂を使った方がいいだろうか? スライムの魂とか入れても歩けるか分からないからな。


 よし、じゃあ、ゴーレムを探しにいくか!


 ん? あれ、俺今からゴーレムを探しにいくのか? そして魂だけをゲットしにいくのか?


 それならゴーレムをそこでゲットした方が絶対、早く済むし、安上がりだろ。


 おれ、俺何してんだろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る