第575話 せいじゃのこうしん


 第一層に捕獲したサメ達を連れて帰ると、早速海馬が偉そうにしていた。まあ、そういう性格なんだろう、せっかくの手下ができたんだし、せいぜいふんぞり帰って欲しい。


 ま、システム的にはただの同居人という扱いなんだが。


 よし、この調子でどんどん雑魚敵を配置していこう。どんなに弱くても、やられ役でも意味が、存在価値があるのだと、敵側になることで初めて知ることができた。


 だって、階層にボス一体だけってどんだけ寂しいんだよ、って話じゃん。ってなわけで次はゾムの階層を飛ばして、デトだな。デトにはどんな同居人が似合うだろうか?


 ん、ゾムはいいのかって? ゾムは放っておいた方がいいぞ、自分の身が大切ならな。


 今はまだいいが、そのうち俺の手の中からも飛び出してしまいそうな、そんな危うさを秘めている、ような気がする程のオーラを持っているんだ。……ヤバいだろ?


 そんな感じで、デトの同居人探しに行こうと外に出た時だった。事件はもう、既に起きていた。


「ゆ、雪っ!?」


 そう、外に出るとあたり一面の銀世界が広がっており、今でもなお雪は深々と降っているのだ。


 俺は慌ててカレンダーを確認した。するとそこには、忌々しい数字があった。


「クリ、スマ……ス」


 バタっ


 いや、倒れていない、倒れていないのだが俺のHPはもうゼロだ。どういう皮肉だろうか、従魔のボッチを解消する為に魔王がクリボッチとは……しかし、別に誰かと一緒にいたいと言うわけではない。


 ただ、ただ、俺も男だ。それだけで十分だろう? 


 よし、計画変更だ。デトの同居人はひとまず置いといて、今から、魔王権限で、緊急非公式イベントを開催する。


 その名も、「正邪の亢進〜リア充爆散を添えて〜」だ。亢進というのは、感情が昂って進むことだ。つまりそういうことだ。どんな感情かは言わなくてもわかるだろう。


 そして、イベント内容は非常にシンプルだ。男女の組み合わせを俺が発見し次第、爆散させていくのだ。幸い、爆散手段には昔から長けているのだ。せいぜい派手に逝ってほしい。


 一つだけ惜しむらくは、このイベントすらも彼らの一つの思い出となってしまうのではないか、ということだ。まあ、こればかりは仕方がない。それはもう、ある種の特権と言えるな。


 ただ、相手のデスペナと俺の快感、いや憂さ晴らしに付き合ってもらおう。


 そもそも、こんなゲームの中で男女でつるむなど、けしからん! 男は黙って、ソロプレイだろ! なんだよ、パーティプレイで男女って!


 せっかく魔王になったんだ。プレイヤーを倒してもいいご身分なのだ。最大限活用するしかない。


「ハーゲン!」


 俺は、お前さえいれば大丈夫だ。では、この世界の悪を滅ぼしにいくぞ。


『ご主人様! 九時の方向、五百メートルに敵影っす!』


『了解した。【爆虐魔法】、フィッションボム』







——————————————————

フィッションボム、日本語で核分裂爆弾と言います。現場からは以上です。

聖なる夜をお過ごしください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る