第572話 最上階


 よし、これでようやく第九層までが完成した。残すところ後は、最上階、そう、俺とハーゲンが担当する階層だ。


 俺とハーゲンがいる場所なんだ、相手を食い止める、と言うよりかは豪華に、魔王との謁見、みたいな感じにしたいんだよな。


 俺の頭の中ではこの玉座があって、そして赤い絨毯が敷かれていて、華やかな装飾で、って言うのはあるんだが、あくまでも魔王だ。


 一国の王と言うわけではないから、全体的に暗めにして、ダークな印象を与えたい。俺を見て恐怖するような、そんな場所を作っていきたいのだ。


 と言うわけで、運営お任せモード起動!


「後はよろしくお願いしますっ!!」


 そう、だから無理なんだよ、素人にデザインとか建築とか無理に決まってんだろ? しかも、プレイヤーが希望と恐怖をないまぜにした感情のままやってくるんだ。


 そこが変に文化祭みたいな完成度だったらどうする? それこそ地獄だろうがよ。だから任せるんだ。餅は餅屋、ゲームは運営、これは至言だ。


 よし、寝よう。明日には完成しているはずだ。


 ❇︎


 あー、今日は休日だからと、寝起きで速攻ログインしたらゲームの中でもねみーぞ。どうなってんだ、このVR技術はよぉー。


「なっ」


 だが、二度寝するには少しばかり目の前の光景が刺激的すぎた。


 そこには、王との謁見の場が用意されていたのだ。全体的に薄暗く、赤い絨毯も血のように暗く、そして、何よりも長い通路、その脇には王を守護するかのように石像が八体も陳列している。


「こ、これは……」


 っべーぞ、やべーぞこれは。


「カッケーーーーー!!!」


 最高じゃないですか、運営さん! 見直しましたよこれは! こんな俺なんかの為にこんな素晴らしいものを用意してくれるなんて……


 もう、運営さんの為なら、何だって……は無理だから出来る限りお力添えをいたしますよ!


 そんなことを思っていたら、スカルボーンの階層の時と同じく、上から手紙が落ちてきた。相変わらず粋だが、今回は特にマッチしている。


 そこには、この度のご利用ありがとうございました、云々カンヌンと、もう一つ衝撃的な内容が記載されていた。


「イベント、報酬のご案内……!?」


 ま、まさかここまでしてくれたと言うのにも関わらず、あの俺が適当に流してしまった、イベントの報酬まで用意してくれるのか?


 しかも、少し手間取ってしまって、用意するのに時間がかかったことをお詫び申しあげてる!


 そ、そんな悪いですよー! こんなにしてもらってるのに受け取れませんよー!


 ……なーんて言えるような清々しい性格をしている俺ではない。もらえるもんは全て貰っていく。いや、もらえないものまですら貰っていく。それが俺のスタイルだ。


 と言うわけで、何にしよーかなー報酬ー、選り取り見取りだなー! ワクワクするぜ!


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