第560話 魔王登場


 俺は鍛冶屋に行ったものの、大して自分を飾ることはできなかった。アクセサリーでどうにか、って思ったけど、人の印象ってアクセサリー一つじゃ変わんねーよな。


 俺の努力は虚しく無常に時間だけが過ぎて行き、結局いつも通りの格好で最後のイベントに出場することになった。


 そのまま肩を落として家に帰ろうとしていた俺だったが、店を出る直前、爺さんが俺に声をかけてくれた。


 せめて姿を隠すのはどうじゃ? と言われ、俺は黒いフード付きのローブをもらった。確かにこれならば俺だとバレる心配もないだろう。


「よし、じゃあ行くか!」


 そう意気込んだ俺は、いつも通り気づいたら転移されていた。


 飛ばされた場所は一試合目と一緒の草原だ。確かに草原は何も遮蔽物がなくて分かりやすいな。俺のデビュー戦になるわけだからしっかりと派手にやってしまおう。


『アシュラ、スカルボーン、ハーゲン、お前らも今回は参加してもらうぞ。最後に俺が登場するから順番に適当に暴れてくれ』


『分かったっす!』


 ハーゲンは元気よく、その他二人は静かに返事をした。これで準備は万端だろう。ってか何も特に用意することがないからな。後はいつも通り適当にすればなんとかなるはずだ。


 それにしてもどのスキルを使うかを迷ってしまうな。分かりやすいので言えば爆虐魔法とかか? 後は藕断糸連も悪くはないな。なんでもアリだからこそ迷ってしまうんだよな。


 よし、もう何も考えずに行こう、感じるがままに振る舞うしかない。


 洞窟から出ると、まだプレイヤー達はお互いの砦から動いていないようだ。相手の動きを伺っているのか、それともまた別の勢力を警戒しているのか、まあ、そちら側が来ないのならば、こちらからいかせてもらおう。


 俺は、隠遁を発動しながらフィールドの中央に移動し、指示を出した。


『アシュラ、スカルボーン、まずはお前らからだ。左右に強襲を仕掛けるのだ』


『『『はっ』』』


『できるだけ中央に誘き寄せるんだ。なるべく乱戦にしてまとめたいからな』


 初代骨ズは忠実に俺の指示を受けて、プレイヤー達を砦から引き剥がし、俺がいる元へと誘い込んできてくれた。最後の仕上げはもちろん、


『ハーゲン! 最後はお前だ、派手にやっていいぞ、お前の力を見せてやれ!』


 アシュラとスカルボーンに引き寄せられたプレイヤー達が、一つに固まって、まさにカオスと呼ぶにふさわしい光景だ。邪神様もさぞかしお喜びだろう。


『分かったっす! ……我が君の雷の片鱗を味わうが良い、【黒轟万雷】」


 黒色に轟く万の雷がプレイヤー達に降り注いだ。これに耐えれる奴なんているのだろうか? また俺が出ずに終わってしまったな。


 あ、そうだ、最後に自己紹介しないといけないんだっけな。隠遁を解除してっと、えーこれ聞こえてるんかな? みんな死んでそうだけどまだ間に合うか?


「我は魔王、魔王Lだ。まあ、今回は挨拶をしに来ただけだ。これから精々私を楽しませてくれ、では」

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