第548話 塵(別視点)
私の名前は
今回はこのゲーム初めての国別対抗の直接対決ということで、私は非常に張り切っているのだ。
ルールは至って簡単、ただただ相手にやられるより多く、相手を倒せばいい、ただそれだけだ。
まあ、実際は相手の砦を攻めてコアというものを破壊できれば勝ちらしいが、そんなことをしてしまっては興醒めだろう。相手を血祭りにあげてこその勝利、血塗られた栄光以外には興味は無いのだ。
私の相棒である、このヌンチャクと一緒に何人もの頭蓋骨を叩き割ってやろうぞ!
「おーい、ワン、じゃなくてWJ,なーにヌンチャクに向かってスリスリしてんだ? 気持ち悪いぞ?」
「私の名はワンではなく、ゥアンだ。それに、ゲーム内ではPNで呼ぶのがマナーであろう? 何を口走ってるのだ?」
「いや、何も口走ってねーし。それにゥアンっていいづれーからワンでいいだろワンで。まあ、王っていう苗字、中国にめちゃくちゃいるからいいだろ別に、あんまり気にしてると禿げるぞ?」
「なっ!? 私は禿げていないぞ? 断じて否定する! 何を根拠にそんなことを言っているのだ! 見てみろこの髪を、しっかり生えているではないか!」
「いや、それ、ヴァーチャルだから。ってか、別にお前が禿げているとは言ってねーし。どうした、お前ってば本当に禿げてんのか?」
「違う! 私は禿げてなどいない! 大体お前は私のリアルの姿くらい見たこと……」
「鎮まれっ!!」
私が友人の鉄拳使いのリーと話していると、突如、大きな声が砦内に響き渡った。どうやらそろそろ動き始めるようだ。
私としてはまだリーとの決着がついてないからいささか不満ではあるが、上の命令では仕方があるまい。
「全党員に告ぐ! この度の戦は我がクラン「ドラゴンヘッド」が取り仕切ることとなった! 皆、私の指示を聞くように! 赤き旗の誇りにかけて、勝利は絶対条件である! 皆、ついてくるが良い!!」
「「「「ウォーーーー!!!」」」」
あれは私らのボスだ。ドラゴンヘッドは中国において最も規模が大きいクランである。プレイヤーのほとんどはこのクランに属していると言ってもいい。
まあ、それはこのクランに入っていなければ身の安全が確保できないからであるが、そういうわけで実質、このドラゴンヘッドのボスが中国のボスというわけだ。
因みに、ボスの名前を気軽に呼ぶと即刻死刑らしい。真偽はわからないが、側近の者しか呼ぶことは許されていないらしい。
まあ、御託は置いておいて、そろそろ侵略の時間だ。この統一の取れた軍の前にいくらU.K.といえども塵と化すだろう。
「全党員、突撃ーーーーー!!!」
我らがボスの司令と共に、全軍が突撃を開始した。私は何を思ったのか、ふとボスを拝みたくなった。見るだけでもご利益があると思ったのだろうか。
そして、ボスが塵と化してしまった。
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