第546話 やり過ぎた件
よし、というわけで海馬の強化を終わらせてしまおう。九重落龍になったはいいものの、なんというかまだ足りない気がするんだよな。他の従魔に比べてもどこか劣っていると感じてしまうのだ。
だが、前回は何やら俺に向かって強そうな技を撃とうとはしていたようだった。その技もどれほどのものなのか気になる。ちゃんと、海馬の能力を判断してどれくらい強化するのかを決めないといけないな。
「海馬ー」
『はい、こちらに』
ゾムの二度にわたるお仕置きが効いたのか、もうすっかり従順な反応を見せている。これはいいことだ。非常にいいことだ。
しかし、改めて体をみると随分と大きくなったように思える。海馬は、元々の姿である、あのタツノオトシゴの胴体を大きくし、そこから九本の首が生えているような状態だ。
本来の姿であれば、どこからが首でどこからが胴体かが分かりにくかったが、今となっては、あ、そこからが首なのね、と分かりやすい形状になっている。
これこそまさに八岐大蛇、と言いたいところだが、残念ながら八股ではあるかもだが蛇でもないし、龍でもない、あくまで海馬は落龍だ。
それに、八岐大蛇は、確か頭は八つだった気がする。海馬は残念ながら頭を九つ備えてしまっている。どこまでも不憫に感じてしまうが、強くしてしまえばいいのだ。だからそんな顔するな、海馬。
『じゃあ、とりあえずお前の一番強い、必殺技を見せて欲しい』
『かしこまりました。では、滅びのバー
『ちょっと待った』
うーん、とても言葉では言い表し難いのだが、このまま海馬に技を撃たせるのは非常に良くない気がしてきた。いや、別にいいっちゃいいのかもしれないが、何故か心の中にあるモヤモヤが拭えないのだ。
もう、いっそ強化してやろう。そして、その強さを体感したほうがまだ良い、はずだ。
これからまた強制進化をするのは同じことして芸がないし、楽しくもない。それに強制進化ばかりに頼るのもバリエーションが減りそうだからな。
どうせやるにしても色んな強化を試したあとでも悪くはないだろう。
そんなわけで次の強化はゾムの時に使った、奪魂と授魂だ。そう、せっかく九つも頭があるのならば、その頭にそれぞれ知能を授けて自立的に動いた方が面白そうだし、強そうだろ?
というわけで、魂を奪って参りました。集めてきた魂は全部で八つだ。海馬の本体以外に吹き込む予定だからな。
順番に紹介すると、火属性を持つファイヤーライオン、木属性のウッドエレファント、雷属性を持つサンダーバード、闇属性のイヴィルバット、光属性のセイントホース、氷属性のアイスボア、回復魔法を使えるフィルシーだ。
あと、エネルギー供給源として、いつもお腹が空いてそうなベヒモスを最後の一体に授けた。これで揃ったな。
「特殊条件を満たしました。従魔:九重落龍、個体名:海馬が九重魔龍に進化します」
え、ちょ、ん? 条件? 魔龍? 落龍から龍を素通りして魔龍になっちゃうの? え、あ……
動き出した時は止まらないように、この進化も俺が事態を把握できるようになったところで終了していた。
そこには立派な九つの首を持った龍がいた。
「フハハは『ゾム、頼むわ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます