第541話 先輩から後輩へ
『そもそもご主人様に対して貴様って、舐めてるんすか? 舐めてるっすよね? ご主人様は俺っちよりも五億倍くらい強いんすよ? 次舐めた態度取ったら……知らないっすからね?』
『……』
『先輩に向かって返事もできないんすか? おい、なんか言ったらどうっすか?』
ハーゲンは海馬になんの恨みがあるのか、徹底的にしごいていた。これが調子に乗った後輩をしばく先輩の姿というものか……ってか、五億倍は言い過ぎだろ。
まあ、俺からするとハーゲンがそれだけ俺のことを慕ってくれているというのが分かって嬉しかったんだけどな。
あ、もちろん海馬が死なないように俺が頑張って絶えず回復スキルを使っている。もうとっくに雷耐性くらいはゲットしてそうだが、なんだ、あれか? 黒雷無効になるまでやる感じか?
『返事をするっすよ!』
ドガーーーーーンッ!!
ハーゲンの雷が落ちた。海馬、可哀想だけど身から出た錆なんだよな。これからは身の振り方を考えるんだな。
『わ、わかりました……』
因みにハーゲンは俺のことをご主人様と呼ばせる前には自分に対して敬語を使わせるようにしていましたね。その時の方が鬼気迫る感じだったのは気のせいだと信じたい。
今の雷を最後に、ハーゲンによるしごきは終了した。黒雷に対する耐性を獲得できたかは分からないが、まあ普通の雷や電気には余裕で耐性があるだろう。
海馬に目を向けるともう、焦点が定まっていない。まるで生気を抜かれたような目をしている。だが、悲しいかな、現実はそう甘くない。だって、先輩があと七名ほどいるのだ。最低あと七回はこれを経験してもらうことになる。
うーん、まあ、あとは彼ら次第だな。海馬の言動に対してどれだけ怒りを覚えているかによってその訓練の激しさも変わってくることだろう。まあ、せいぜい頑張って欲しい。
❇︎
その後、先輩達によるしごきは熾烈を極めていった。まず、ハーゲンの次はスカルとボーンだ。この二人は一番まともだと思っていたのだが、それは優しさにはつながらなかったようだ。冷酷に、合理的に海馬を殴っていった。
特に何も言わず、淡々と、だ。これもこれで怖かったことだろう。しかしこれで海馬は打撃に対する耐性をえたはずだ。
そしてその後も海馬は、アシュラによる斬撃耐性、アストの糸による捕縛耐性、ペレによる炎熱耐性、アイスによる氷冷耐性、デトによる毒耐性、そして最後がゾムによる精神耐性を獲得していった、はずだ。
アイスなんか嬉々としてえげつない魔法をぶっ放しまくって危うく死ぬところだったし、ゾムはいつも通りのスプラッタだった。まあ、ゾムに関しては直接攻撃をするのではなく、その惨状を見させて精神を鍛えることにした。流石にあれを体験するのは可哀想だからな。
だが、これで相手を倒すことにも抵抗はなくなったはずだ。
海馬も随分と耐性も増えてきたし、何よりもあの傲慢な態度が嘘みたいに消えた。最後のゾムの仕上げが効いたのかな?
何はともあれ、防御力の大幅上昇に成功したことだろう。だが、それだけでは強い敵には勝てない。
そう、今からは身を守る盾ではなく、相手を貫く矛を用意する時間だ。
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