第537話 海馬の中身
『海馬! これからよろしくな!』
小さな見た目をしているため、アイスみたいな可愛い系かと思って、ちょっとお兄さん風で挨拶をしてみた。すると、
『貴様が我を服従させた者か。ほう、そこそこやるようではないか。まあ、これから我の主君として見合うだけの力を見せてくれたまえ』
え、誰……? なんでこんなに上からなの?
『そ、そうですね、しっかりと頑張ります』
『うむ、ではこれからどうするのだ? 取り敢えずこの大洋を制圧でもするのか?』
いや、大丈夫かこのタツノオトシゴ、竜の落とし子の分際で、と言ったらあれかもしれないが、まだまだ小さいのにそんなことが言えるなんて大したもんだな。
ってか、なんでこんな尊大な態度が取れるんだ? もしかしてコイツ滅茶苦茶強いのか?
『そうだな、まずは貴方の能力を見せてもらって良いですか? それを見て、今後の方針を決めたいと思いますので』
『うむ、分かった。では、ここで我が自らの強さを証明すれば良いのだな?』
『いえ、実戦で証明してください。相手がいた方がやりやすいでしょうし、私としても分かりやすいので』
『なっ…………い、い、良いだろう。では、行こうかの、相手はだ、誰にするのだ?』
なんだ、今の間は、それに急にドモり始めたな。もしかして……いや、まだここで判断するのは早計だな。取り敢えず、的モンスターを探そう。
『じゃあ、こいつと戦ってもらいますね』
『ん、どこにいるのだ? どこにもおらぬではないか、もしや我に小魚を相手にせよというわけではあるまいな?』
『まさか、もう目の前にいるじゃ無いですか、クラーケンが』
そう、初戦の相手は俺も馴染み深いモンスターのクラーケンだ。俺がタコパするのに付き合ってくれる良いモンスだ。今回も俺の従魔の手合わせに付き合ってもらおう。
『く、く、く、クラーケンじゃとぉおおお!? お、お主正気か!? あの、海の守護者とも呼ばれるクラーケンに喧嘩を売るとはどういう了見なのだ! 我は付き合ってられぬ!』
「あっ」
逃げた。やっぱり口だけのヘタレだったか。数分前大洋を支配するって言ってたのはなんだったんだ? クラーケン相手にビビりすぎだろ。
それに、クラーケンって海の守護者って呼ばれてるのか。まあ、海の生物からしたら心強い味方なんだろうな。俺にとっても頼りがいのある敵だし。
この場で俺が倒すこともできるが、それをしてしまうとなんの為に倒すのかいよいよわからない。俺がただタコパしたかったやつになってしまう。せめて、倒せないのならば、主君の強さというものを見せてやろう。
「海馬ぁ!」
ここからは上から行く。さっきまでは尊大な態度にビビってしまっていたが、もう、ヘタレに謙る必要はない。
『な、なんじゃ何故呼び出した! 我は戦わぬぞ! 守護者に向かって歯向かうなど、ただの命知らずではないか! 我はまだ死にたく無いぞ!』
『うるさい、もう、お前には期待していないからそこでブルブル震えながら見とくんだな。お前の主人がどれだけ強いかを、な』
『なに?』
「【乾坤一擲】」
いつもは龍化してたけど、今ならこれでいけるだろ。
『お、お主一体何を、ま、まさか!?」
『そのまさかだよ、ふっ!』
俺が刀を抜くと、クラーケンは一刀両断になっていた。
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