第536話 キャラ被り


 俺は今、海の上に立っていた。いや、飛んでいるといった方が適切なのだろうか。まあ、そんなことはどうでもいいか。そう、俺はここに水棲モンスターを配下に加えるためにやって来た。


 俺には世界に混沌を齎すという新たな使命が課せられたのだ。全力で取り組んでいきたい。では、早速入水しよう。別に死ぬわけでもないし、死ぬこともできない。


 ボチャん


 海の中はとても心地が良かった。適度にひんやりしており、興奮する心を沈めてくれるような気がする。そして、感覚が研ぎ澄まされ、気持ちいいのだが寝てしまうような感じではなく、むしろもっと精力的に活動したくなる感じだな。


 入水した俺はとりあえず深く深く潜っていく。浅瀬にはおろか、中層にもめぼしいモンスターはいないだろう。深海に行って初めているかどうか、と言ったところか。


 まあ、俺には成長させる能力があるから別にそこまで厳選する必要もないが、どうせなら、という奴だ。それに、俺の配下たちはもうすでにかなり強いから、そいつらに並べるくらいにはなってもらわないとな。


 お、早速モンスターだ。これはー、あれだな、ダイオウグソクムシ、詰まるところダンゴムシだ。うーん、こいつがいたら面白そうだが、小さい魔物はアイスがいるし、鈍重キャラもデトで十分だ。俺はキャラ被りだけはしたくない。


 その他にもモンスターがいるのはいるのだが、こんな陽が当たらないところに住んでいるせいか、皆どれも見た目がな……グロ担当はゾムで十分だし、もう、ここには用はなさそうだ。


 他にもかなりの範囲で探索を続けたのだが、欲しくなるようなキャラは存在せず、もう諦めて帰ろうとしたその時だった。


「ん? これは?」


 海底、神殿だろうか? どこか懐かしい気もするがだいぶ前に見たものはこれよりも遥かに大きかった。これはどちらかというと、祠サイズなのだが、中に人が入れるから神殿なのだろう。まあ、とにかく入れそうなので、入ってみる。


 中は、見た目通り狭かった。しかし、整えられており、綺麗で、悪くはない。そしてその中央にいたのが……


〈Lv.300 シーホースドラゴン(幼体)〉


「こ、こいつだ!」


 どう見てもタツノオトシゴにしか見えないそいつは、神殿の中央で眠るように待機していた。名前の欄に幼体とあることから、もしかしたら成長しきったら目覚める、とかそういう類のものかもしれない。


 もし、そうなら青田買いできてお得だし、まあ弱くても強くするから安心してほしい。


 それにしても俺の配下にドラゴンなんて、これはいいな。これからどんな風に成長するのか楽しみだな。


「【服従】」


「シーホースドラゴンの服従に成功しました。名前をつけますか?」


 そうだな、名前は……


「決めた、海馬だ!」


 うん、これで漢字キャラとしても成立するからな。これから、よろしくな!

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