第527話 性悪


 ってか、よくよく考えたら、このダンジョン、ずっと性格悪いんだな。


 初っ端から雑魚モンスターで相手を油断させておいて、まさかの高レベルだったり、鮭うまそーって思わせておいての、アニサキスだったり、どう見ても近接ゴリマッチョだろ、と言わんばかりの黒達磨が遠距離攻撃だったり、もう、ただただ性格悪いダンジョンじゃねーかよ。


 次はどんな性格の悪さが出てくるのだろうか、そんなことを考えながら、次の階層である、第六階層に恐る恐る足を踏み出すと、そこは……


 ダンジョンだった。


 そりゃそーか。今までもダンジョンだったし、黒雪が降っていた第四層以外は基本的にダンジョンだったしな。剥き出しでも何もおかしなところはない。


 ただ、至る所にモンスターというか、生き物の気配はする。視界の中には見当たらない為、どこかに隠れているのだろう。最初から奇襲目的でこんな数のモンスターを仕掛けるなんて、やはり性格が悪い。


 まあ、惜しむべくは俺に全て筒抜けということだな。これならば常に気を張っていなくても、準備できるし、奇襲の意味は全くない。正々堂々、正面突破してやろうじゃ無いか。


 まずは一つ目だな。結構すぐ近くまで来ているが、まだ顔を見せない。ギリギリまで引きつけてから、ということだろう。まあ、ばれてるんだけどな。


 そうだ、何かスキルを準備しておいて、モンスターが出てきたら速攻で倒してしまおう。


「【不動之かt……】」


 これ発動したら動けなくなるところだった、危ない危ない。時間経過で出てきてくれるなら良いけど、俺がポイントまで行かないといけないパターンなら困ってしまうところだった。


 気を取り直して、そろりそろり移動しながら、スキルの発動準備をしておこう、途中までで待機しながら目的地であろうポイントまで進むのだ。


「【パキケファロ……」


 それは、俺が予測していた地点まで到着した時だった。あまりにも多くのことが同時に起きたから、順を追って説明しよう。


 まず、予想通りモンスターが出現してきた。しかし、予想外だったのはそのフォルムだ。かなりの大きさの球体だったのだ。そして俺はそのフォルムにどこか既視感を覚えつつもスキルを完全に発動し、頭突きをお見舞いしようとした。


 だが、その目論見は外れることとなる。俺が頭突きをしようと、飛び出し空中にいるほんの僅かな間で、相手がなんと、


 ッドッガーーーーーーーん!!


 自爆したのだった。


 どこかそのフォルムに既視感があったのは、昔に見ていた国民的アニメに似たようなコンセプトのモンスターがいたからだろう。


 それはおいといて、俺は目の前で自爆されたのだ。ただならぬ衝撃波をこの身に受け、吹っ飛ばされたのだ。命があることを感謝できるほどの威力だった。


 まさか、奇襲の上に自爆モンスターを掛け合わせているとは……なんとも性格が悪い。しかもこれが一発目なんだぞ? 全く良い性格してるぜ。


 だが、気持ちを切り替えなくては、まだまだ隠れているモンスターは山ほどいる。用心するに越したことはない。またいつ自爆モンスターが出てくるかもわからないからな。

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