第525話 仮定と裏付け


「よし、入るか……準備はいいか、ペレ、デト?」


『はい、いつでも入る用意はできております』


『私もです』


 俺が今、何をしているかと言うと、第四層の階段の前にいる。俺は一度、第五層から死に戻りをして、再びこの邪の祠へと戻ってきた。もう一度入り直せば、ダンジョンは元の姿に戻ってくれると踏んだのだ。


 俺が思いついた仮定を証明する為に、今回はデトも引き連れている。


 二体の従魔を引き連れて俺は階段を降りて行く。先ほどの大爆発を思い出すと、少し怖さもある。もし、俺の仮定が一切かすらず、全くの見当違いであったら、その時はデトだけでも死守する。まあデト以外は死なないからな。


 ペレのリングは一度きりかと思っていたのだが、なんと、二十四時間のクールタイムの後、再使用が可能となる代物だった。相変わらず素晴らしい装備をありがとう、爺さん。雲の上から見守っていてくれよな。


 そんな訳でまずはペレのみを第五層に送り込む。そして、先ほど俺が思いついた仮定の裏付けをする。


『ペレ、どうだ? さっき俺に召喚された時に感じた、あの燃え滾るような感覚はあるか?』


『こ、これは……! 確かに感じます、が、一体なぜ?』


 ふむふむ。これで俺の仮定へと一歩近づいたようだな。あ、俺の過程というものは、この空間が、いや、この第五層全体に可燃性のガスが充満しているのではないか、と言うことだ。そうすれば、ペレの燃え滾るような感覚も、あの大爆発も、説明がつく。


『よし、じゃあ一旦戻ってきてくれ』


 これで収まったら、より確実なのだが……うん、上手くいったようだな。


『よし、ペレありがとな。じゃあ次はデトだ。向こうに行って、空気清浄をしてみてくれ』


『かしこまりました』


 まあ、空気清浄と言っても、デトからすればただの食事のようなものだが、言ってしまえば空気中の毒、害となるものを摂取しているだけなのだ。つまり、可燃性のガスは確実に有害だろうから、デトの呼吸でそれが確実に裏付けられる、と言う訳だ。


 そして、俺が気がつかなかったのは、毒無効をゲットしてしまっているから、であれば納得はいく。


『こ、これは!』


 お、デトが反応してくれた。つまり、この空気中に何かあった訳だな。それは一体どんなガスなのだろうか? 気になるな。


『ご、ご主人様! こ、これは危険です、この層には酸素しかありません!』


「え? さん、そ?」


『はい、酸素です。酸素は我々生物が生きて行く上では必須な気体ではありますが、多すぎては毒となります。普通の生き物ならまともに呼吸もできないでしょう』


 え、そうなの? ってか今、自分で自分のこと普通の生き物から除外しちゃったけど大丈夫?


『私にとっても素晴らしいご馳走ですが、これだけの量となると、少々手に余りますね、しっかり堪能させてもらった後はそちらに戻らさせてもらってもよろしいですか?』


『あ、ああいいぞ』


『ありがとうございます! ご主人様はこれほどまでに素晴らしい御馳走を用意してくださったのに、全て堪能できなくて申し訳ないです……』


 えぇ……

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