第524話 謎解き


 俺が第五層に降りた時、そこは真っ暗だった。少しの光源も見つけることは叶わず、終いにはペレを呼び出して、灯りを灯してもらう事となった。


 しかし、そこで事件は起きたのだ。炎を出そうとした瞬間、いや、炎を出した直後だろうか、突如このそう全体が揺れるように爆発したのだ。しかもかなりの高火力で、だ。


 俺じゃなければ、ペレも宿命のリングをつけていなければ死んでいただろう。それほどの威力だった。


 しかし、なぜ爆発が起きたのか見当がつかない。そういう仕様、ギミックと言われればそれまでだが、今ゲームはそんなゲームだから、という雑な理由で片付けてくることはこれまで、ない、とまではいかないかもしれないが、少なかったように思う。


 そんな世界なのだここは、もう一つの世界、仮想現実世界である以上、何らかの理由があるはずなんだが……


 全く分からん。ペレが炎をつけた事と何か関係がありそうだ、くらいしか分かっていない。それすらも正しいか怪しいのに、それ以上のことが分かるだろうか。


 むむ、こうなったら事情聴取だ。現場にいたもう一人の人物に話を伺ってみよう。


『なあ、ペレ、何か変な感触はなかったか? いつもと違う感覚とか、少しでも良いから何か感じなかったか?』


『変な感触……ですか、ご主人様に呼ばれた際に、とても全身が燃え滾るような感覚に襲われたのですが、それはご主人様に呼ばれた事で気持ちが興奮していたから、でしょうし……それ以外には特には変わった点はないと思われます』


『そ、そうか、ありがとう』


 ぺ、ペレは俺から呼ばれるとテンションが上がるという、ただただ俺得な情報のみが手に入ってしまった。いや、俺得かも怪しいか? まあ、配下に好かれることはいい事であろうから、よしとしよう。


 それにしても、結局手掛かりは何も得られなかったな。こうなってくると現場の調査だな。俺は決して諦めないぞ、何か、何か手がかりがあるはずだ!


「……っ!? これは!」


 それは、階段のところまで戻った時の事だった。なんと、あれだけ大規模な爆発が起きたのにも関わらず、第四層へと続く階段には一切の被害が出ていなかったのだ。


 階段のスペースはセーフティエリアとしての機能があるのか? もし、そうなら一切のダメージというか被害が及んでいないことも説明がつくが……そうだ、モンスターをここまで連れてきてみよう、そしたらここがセーフティエリアかどうか分かるな。


 無茶苦茶になってしまった第五層に希望は持てないため、第四層のモンスター、そう、クロダルマをこっちまで誘導してきた、すると、、


「あっ、おい!」


 ふっつうに入ってきた。そしてその時の顔が何ともウザかったので、爆虐魔法で爆散させといた。


 ということは、階段スペースはセーフティエリアではないってことだ。ではなぜ、あれほどまでにクッキリと被害の境界線ができていたのだろうか、もしかして階段の耐久力がすごいのかと思ったが、全力で切りつけたら普通に欠けたのでこれも多分違う。


 この階段は不思議な暗い無傷なのだ。そう、まるで何か見えない何かで守られているような……


「見えない何か……はっ!」


『な、なあペレ! 今もその俺に呼ばれた時の燃え滾るような感覚はあるか!?』


『い、いえ、今は多少落ち着いてきましたが……」


 もし、ペレのその感覚が気のせいじゃないのだとしたら、謎は解けたかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る