第521話 ロケットパンチ


 バシュン!


 クロダルマのその巨体から放たれたのは、まさかのロケットパンチだった。


「え!」


 俺は普通に肉弾戦をするつもりで相手の懐に忍び込み、アッパーを決めてやろうと思っていたのだが、まさかの攻撃に対して反応できずそのまま大っきい一発をくらってしまった。


「ってー、」


 いくら物理攻撃無効とは言え、衝撃はモロにくらう。かなりの距離飛ばされた俺は、体勢を整えようと体を起こそうとした時、


 ボゴッ


 第二波が飛んできた。まあ、それもそのはず、なんたって腕は二本あるからな。気を付けていなかった俺が悪い。ただ、なんというかこの拳、重い。この拳に殴られると脳を揺さぶられるような、生気を奪われるような、そんな感覚に襲われる。


 頭を殴られるとこんな気分になるのだろうか。


 なんていうのだろうか、この気怠い感じ、体を動かしたいのだけどそれすらも怠く、かといって何もしなければまたどんどん腕がとでくることになる。なんとか、なんとかコイツだけは倒したい。


 ボゴッ


 クソッ、フラフラの中どうにか立ち上がったと思ったらこれだ。もう、諦めたくなる。もう、全てを投げ出したくなるほどに。


 ん? 別に投げ出してもよくね? もう、良いや投げ出してしまおう。そうだ、こんなことをする為にゲームをしているんじゃないからな。ゲームの中でくらい自分の好きな生き方をしないとだよな!


「【不動之刀】、【雨叢雲剣】」


 このスキルは対象を見定め、確実に殺す技だ。不動之刀で威力を上げ、雨叢雲剣で全てを断ち切る。


 別に相手に付き合ってあげる必要もないんだよな。なんか相手の土俵で倒したくなったけど、気にせずぶった斬るぜ!


 なんせうざいからな、あのクロダルマ。どう観ても近接のくせに遠距離から物理攻撃をばかすか打ちやがって、その腐った性根を俺がきっちり斬り落とす。


 キンッ


 黒く、重たい雪も俺の刀の前では、ひらひらと舞い散る花びらと変わらぬ、ってな。


 小さい頃憧れていた、アニメの剣士の真似をしてみたが流石に恥かしいな。人前では愚か一人でも恥ずかしいぜ。


「ん、これは?」


 そこに落ちていたドロップアイテムを拾った。詳細を観てみると、黒雪塊というらしく、黒くて硬いただの雪玉にしか見えないがな。また、それは人の負の感情を吸い取ることで固くなるという性質を持つらしい。


 なるほど、だから黒ダルマはあんな陰湿な攻撃をしてきたんだな。それとあの攻撃をくらってなんか変な気分になっていたのも謎が解けたな。こんな汚い雪に殴られたらそりゃおかしくなるだろうし、イライラもするはずだ。


 さっさと次の階に行こう。こんな黒銀世界、全く綺麗でもないし、なんか気に食わない。


 よし、じゃあボスでも倒しに行くか!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る