第515話 次の階層


 ちょっとゾムには一旦、帰ってもらった。うん、流石にヤバイわ。なんというか純粋なおぞましさというか、無邪気な狂気というか、とにかく恐ろしかった。流石に俺の精神衛生上もよろしくなかったのでお帰りいただいた。


 とりあえず、この階層から降りるとしよう。この階層はひたすらゾムの餌食になってしまったのだが、どうやら獣モンスターがメインだったようだ。


 ウサギから始まり、狼、虎、象、狐など様々なモンスターが現れた。それらのモンスターを無造作に蹂躙していくゾムは飼い主ながらなんということをしてしまったのだろう、と感じてしまった。ここがダンジョンで本当に良かったと感じている。


「お、」


 階段が見つかった。まじでゾムはこの階層のほとんどを攻略していたんだな。うん、もう、一旦ゾムのことから一旦離れよう。


 次の階層はどんなモンスター達が出てくるのか、そんなことを考えながら階段を降りて一歩目を踏み出すと、そこには何か変な感触があった。


 踏み出した脚だけではなく、そのまま進んでいくと身体中にねっとりとして液体のようなものが体に纏わりついてきたのだ。


「うぇ」


 非常に気持ち悪かった。まるで。スライムの中、はちょっとタイムリーかつ想像したくないから避けるとして、んー、ねっとりしててベトベトネチャネチャという擬音がピッタリくるようなそんな感触が体全身にあるのだ。


 先ほどスライムの中と言ったが、それよりももっと汚い感じだな。それこそ、、ゾンビスライムみたいな感じかもしれない。


 よし、もう考えるのをやめよう。憶測で話すことはよくないし、ましてそれで配下の印象を操作したくはないからな。ゾムは非常によくやってくれているのだ。ただ、多少、力の見せ方が分かってないだけなんだ。


 そして、ここに入ってきた瞬間わかったことがある。それはこの階層に出てくるモンスターは恐らく水棲生物だろう、ということだ。


 この気持ち悪い液体に触れた瞬間からそういうことであろうとは察していたが、いわば邪の祠の水族館な訳だ。水質がいいわけがない。むしろきれいだったらこっちが戸惑ってしまうくらいにな。まあ、獣と対比されるものってなんだろう、って考えていたらこうなったら、誰でも察しはつくだろう。


 ほら、どうやらモンスターがやってきた。空中を漂いながら、


〈Lv. 350 ホワイトサーモン〉


 どうやらコイツは鮭のようだ。それにしても無駄に詳しいな。さっきなんてウルフ、とかスケルトン、みたいにほぼ種族名だけというのが多かったにも関わらず、急に、ホワイトサーモンとか言い出したぞ、おい。まあ、サーモンは美味いから許すけども。


 ビュンッ!


 うぉ、速いな。サーモンが一直線に俺の元に飛び込んできた。その鋭利な先端を俺に向けてだ。なんて恐ろしい魚なんだよコイツは。


 ぐさっ 


 だが、まあ俺クラスになってくると手で止められるようになる。甘いなサーモンよ出直してくるのだ。


 そう言って俺はスキルを発動した。


「【斬法十四手】!」


 俺は婆さんとの修行を思い出し、スキルを使って一瞬で三枚下ろしにした。


「う、うんまーー!!」

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