第514話 不味みとスプラッタ
「え、ゾム、お前なんかした?」
「ぐ、グゥ」
そう言ってゾムは、ブチっと自らの腕を切り離し、俺に向かって「ほれ、食べな」とても言うように差し出してきた。
俺はそのまま受け取って食べてみると、
「う、うん?」
俺はその透明な見た目からてっきりわらび餅のきなこをかけてない感じかと思っていたのだが、どうやら違うようだ。
うーん、うまく伝えられないのだが、酸味というか、エグミというかなんというか、刺激的な、というほどでもないのだが、確実にただのスライムではない、何かがあるのだ。ただのスライムではないってことはもちろん、
「これはゾンビの要素ってことか?」
「ぐ、グゥ」
ゾンビ、それは腐った体や感染といったものが代表的な要素としてあげられるのだが、もしかしてこれほど透明なスライムの体に、ゾンビの腐った要素、つまり腐要素があるとするならば、
それを大量に食べ続けたウルフに影響はなかったのだろうか、いや、あったからこそ死んだのか。
スライムの体であるから、水溶性で体を巡りやすかったのも一因なのだろうか。腐った肉、いや腐った水を大量に飲み続ければどんな生物でも死ぬと言うわけか。
俺は毒無効も、腐蝕無効も持っているから少しの雑味、えぐみ、苦味程度にしか感じなかったのだが、逆を言えばこの二つの無効をもってしても感じることのできるほどだったというわけだ。
ん、ゾムってもしかして強い? 圧倒的再生力に恐怖心もない、それ故に食べられることも辞さない。そして、その肉体は汚水ならぬ腐敗水ときた。更に感染能力も持ち合わせているのだ。
ん、そんなつもりはなかったんだけどな。あくまで偶然の産物だし、俺に非はない、はず。
ここまで来たらもう、トコトン強くなってもらうしかないな。
❇︎
「お、おーい、ゾムー」
「ぐ、グァ?」
ん、どした? みたい顔すんじゃねーよ。別に顔は変わってないのだが、度重なる戦闘経験により少しはINTが上がったのか、いろんな空気を纏うようになってきた。まあ、それでもゾンビスライムの範疇でだが。
そ、それよりもゾムがヤバイ。適当にモンスターを倒して良いと許可を出すと、それはもう酷かった。
最初は自分を食わせるだけでまだマシだったのだが、途中から殴ることを覚え、絞めることを覚え、最終的には相手の穴から相手の内部に侵入して、体を膨張させて殺すという技を身につけてしまった。
スライムはどこからリソースを吸収しているのか分からないが、もし食べ物全般であるなら、相手の内部を食べて大きくなって破裂させたのだろうか、そう考えると恐ろしいな。
時々、感染させては取り込んでたし、え、ゾム何者?
ちょっともう、気軽にモンスターを合成する気が出ないほど、ゾムの所業はスプラッタを極め尽くしていた。
ちょっと今日、お肉食べれないかもしれない……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます