第512話 オーバーキル


 ゴブリンが出てくるエリアが終わった後は、今まで倒してきたいろんな種族が渾然一体となって現れるエリアであった。


 今までは、スケルトン、ゾンビ、スライム、コボルト、ゴブリンのようにたまに別のモンスターが出てくることはあっても基本的に同一モンスターしか出てこなかったのだ。だからこそ見張りをさせるなんてことも容易かったわけなんだがな。


 まあ、いくらランダムに出てくると言っても、一体一体の脅威がそれほど高くないため怖くはない。目の前の敵を確実に排除していくだけだ。


 そんなこんなで敵を屠り続けていると、階段が見えてきた。どうやら一階層ではないらしい。


 まあ、ここはダンジョンだろうから多層構造になっているのは当たり前だし、ここに高レベルの雑魚キャラしか出てこなかったことから容易に推測可能ではあるか。次にはどんなモンスターが出てくるのだろうか。高レベルの中キャラ? いや、雑魚の次は弱か?


 まあ、いけばわかるか。


 階下へ下ると、そこには……、一階と何一つ変わらぬ光景が広がっていた。まあ、ダンジョンだし、そんなものなのだろうが、帰らずの塔みたいに一層ごとにコンセプトが違うやつかと期待していたんだが、そうはいかないようだ。


 まあ、邪の祠とコンセプトが一貫しているんだろうな。でも、流石にモンスターは変わってくるだろう。どんなものが来るか楽しみだな。


「グルルル」


 あっ、お、お前は!!


〈Lv.350 ホーンラビット〉


「ほ、ほ、ホーンラビット!!」


 俺がこの世界で一番初めに出会ったモンスターにして、最初の死因を生み出したモンスター。俺の冒険はお前から始まったと言っても過言ではない。


 そんなお前と再び巡り合えることができるだなんて、夢にも思っていなかったぞ! 俺は今、なんかどうしようもない気分に駆られている。なんか、こう、懐かしいような、それでいて報われたような、、、


 いや違うな。俺は今、コイツと戦えることが嬉しいんだ!


 思い出として従魔にしようかとも思ったが、やはりコイツは思い出のままにしておくのがいい。だからここで俺は過去の俺の屍を超えていく!


「くらえええーー!! 【龍宿】!!


 俺は完全な龍の姿になるのではなく、龍の力をその身に宿す程度で収め、高い機動力とパワーを手に入れた。このスキルを使うのはいつぶりだろうか。特に、この龍宿になってから初めてなんじゃないか?それをコイツに全力投球できるなんて最高だな!


 俺の最初の敵にして最初の味方、俺を形作ったとも言えるお前は悠久の時を経てここまできたんだな。だからこそ俺は、俺は、、、


「【藕断糸連】!」


 ズババババ、グシャッ!


 あ、死んだ。ちょっとこれは流石にやりすぎたな。うん。


 これからはもうちょっと抑えよう。一戦闘につき一スキルぐらいには、な。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る