第510話 深刻なコミュニケーション


「おーい、ゾムー」


 どれだけI NTが低かろうと、俺の言葉は理解できるようだ。まあ、俺もゾムの言葉はなんとなく理解できるから、かろうじて意思疎通はできる、って感じだな。まあ、なるべく早くちゃんとしたコミュニケーションが取れるようにはしたいが、急務ではないだろう。


 今からはゾムの現場について調べていく。スライムとゾンビからできたゾムがどんな生態なのかしっかり調べておくことは今後のモンスター合成において重要となるからな。


 え、邪の祠を攻略しろって? 今はこちらの方が先決なのだ。ゾムもよくよくみてみるとどことなく愛嬌があって可愛く思えてくるんだぞ? まあ、自分が生み出したからっていうのもあるかもしれないがな。


 いわゆる子供補正ってやつだ。親は自分の子供なら無条件で大好きだし、愛するもんだろう。そういうことだ。


 大丈夫、敵の襲撃に対してはちゃんとケアしている。ここでたくさん仲間になってくれたスケルトンたちに協力を仰魏、見張りに立ってもらっているのだ。


 敵からしたらただの同僚だし、疑う余地すらないだろう。こちらに来ないよう、うまく誘導してもらっている。


 よし、じゃあ気を取り直してゾムの調査だな。まずは体を詳しくみていこう。ぱっと見はスライムだが、最後までたっぷりスライムたっぷりなのか? それとも臓器なんかはあったりするのだろうか?


「……」


 流石に斬ってみるわけにもいかないから、ゾムの心臓に手をあててみる。完全にスライムだったら大丈夫そうだが、少しでもゾンビ要素があった場合を考えると怖くてできない。


 だが、その心配は杞憂だったようだ。鼓動が無かったのだ。少なくとも心臓に関してはないだろう。その他の臓器も気になるが、心臓だけないというのもおかしな話だ。それならばもっと直接的に調べてみよう。


「ゾム、体の一部を切り離したりできるか?」


「ぐ、グゥ」


 ビチャ、という音を立てて腕を切り離して見せてくれた。どうやら中までたっぷりチョ、スライムたっぷりのようだ。これは使いこなせば戦闘でうまく使えそうだな。斬られたフリをして、腕をくっつけることもできる。いや、体がスライムならそもそも斬られても問題ないか。


 ここまでくれば完全にスライムなのだろうが、最後に本人確認をしておこう。自分の体は自分が一番よくわかるだろう。


「お前の体は完全にスライムなんだな?」


「ぐ、グゥ」


 よし、これで大丈夫だな。あ、因みに答えが「はい」の時は「ぐ、グゥ」で「いいえ」の時は「ぐ、グァ」っていうことが、ちょっと前の一問一答によって判明している。これだけが俺とゾムのコミュニケーションなのだ。


「じゃ、ゾンビとしての能力は使えるか?」


「ぐ、グゥ」


「お、まじか! じゃあ、今使ってみてくれ」


「ぐ、グガ」


 あ、困ってる。困った時や分からない時、はいかいいえじゃ答えられない時、ゾムは「ぐ、グガ」っていうんだ。


「今使えないのか?」


「ぐ、グゥ」


 なぜ、使えない、って聞くのは無理だろうから、


「MP不足か?」


「ぐ、グァ」


「人がいるのか?」


「ぐ、グゥ」


 お、ビンゴ! ゾンビで人がいるってことはもしかして、アレか? 取りああえず、人員を用意しよう、配下のスケルトンにやらせるわけにはいかないから、、


「召喚」


 目の前にスケルトンを呼び出した。こいつなら構わないだろう。


「コイツにできるか?」


「ぐ、グゥ」


「じゃあ、やってみてくれ」


 俺がそう言うと、ゾムは徐にスケルトンに近づき、噛み付いた。すると……



 もう一体のゾンビスライムが、出来上がってしまった。

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