第505話 邪とは


「【韋駄天走】」


 俺は走り続けた。途中、モンスターが俺に気付いて襲ってこようとも、見向きもせず、置き去りにしていった。


 ただひたすらに、奥へ奥へと走っていると気づけば俺は……


 海岸に到達していた。


「ん?」


 慌てて引き返してまたダッシュすると、すぐに反対側についてしまった。


「んん??」


 どうなっているんだ、これは。なんでそんなすぐに反対側に出てしまうんだ? 俺は一瞬で島を横断してしまっていると言うことか?


 いや、まさかそんなことはないだろう。俺が確認した島はかなり大きかったからな。あんなにデカかった島なのにこうしてすぐに反対側に行けてしまうってことは何かあるのか? 


 くそ、こうなったら今までみたいにゆっくり歩いてみるか。でも、モンスターと無駄な戦闘にならないように隠遁を発動しておこう。そうしておけば速やかに目的地に到着するであろう。


 俺は来た道、いや自分が歩いていた道を歩いていた。意味がわからないかもしれないが、これは事実だから受け入れてほしい。そしてそのまま慎重に歩いていると、ちょうどどれくらいだろうか、体感では二十分くらい歩いたとおもうんだが、そこに小さな、とても小さな祠、のようなものがあった。


 これは俺じゃなきゃ見逃しちゃうな。まあ、多分二回くらいは見逃していると思うだが、見つけたからもう見過ごしていたのはチャラになるのだ。


 まあ、それはおいといて、この祠はかなり小さい。まあ、小さいと言っても俺の膝くらいだな。俺が想像していたものが、どでかい祠だったから、とても小さく感じてしまったのだが、祠というものは元来、こんなサイズなのか?


 ん? それにしても邪の祠に到着してしまったぞ? これで良いんだよな? 強い力が得られるんだよな? 思ったよりもあっけなかったと言うか、拍子抜け感がすごいが、まあ到着したのは事実だ。


 さあ、俺を強くするのだ!!



「……」


 あれ、おかしいな? なぜ何も反応しない。邪の祠なんだからせめて邪っぽい何かを体感させてくれよ。


「…………」


 え、まじで何もないのか? はぁ? ここまで来たのにか? はい、もう怒りました、僕プッチーンです。もう、どうなっても、知りませーん。


 ッダンッ!


 その時の俺はどうにかしていたのだと思う。二回も祠を見逃し、長い時間歩かされ、仕舞いには祠からもシカトだ。そんなちょっとしたイライラが積もった結果、普段なら決して取らない奇妙な行動をとってしまった。


 そう、俺は思いっきり祠を蹴り飛ばした。いや、蹴り飛ばしてしまったのだ。


 すると、そこから煙が出始め、あるはずのない気配が生まれた。それも、把握し切れないほどの量だ。


 祠があった場所にはどこか見覚えのあるものが見えて…。


 俺はどこかに飛ばされた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る