第503話 延性と展性


 アシュラと共に大きな反応が会った方に向かうと、そこは巨大なモンスターがいた。


〈Lv.250 ゴルディックラース〉


 そのモンスターはただでさえ巨大なアシュラよりも一回り大きく、圧倒的な存在感を放っていた。見た目は、、金ピカゴリラっていうのが一番しっくりくるかな? とにかくそんな見た目なんだ。


 だが、侮れる相手ではない。体が大きいだけでなく、骨格、筋肉共に大きく、しっかりとゴツいのだ。またまた今回はアシュラにとっては苦戦するかもしれないな。


 まあ、キャラ被りしているから、同族嫌悪みたいなものが発動するかもしれないが、それはお互い頑張って欲しいな。


『アシュラ、こいつでいいか?』


『はっ、必ずや倒して、その首を討ち取りましょう』


 力強い言葉を俺に返したアシュラはそのまま一歩前に歩み出た。そして一言、


『いざ、尋常にまいる』


 先に動き始めたのは、アシュラだ。陸刃の剣を六本に展開してまるで舞うように相手に斬りかかっていった。


 しかし、それに対して相手のゴルディックラース——長いな、ゴリラでいいか——は、全く意に介していない様子だ。その体は金ピカに輝いており、その素材が俺の知っているものと同じならば、かなりの強度を誇ることになる。アシュラであるから攻撃が一切通らない、ということはないだろうが、それでも骨が折れる相手になりそうだな。


 自分の剣がキンキンと弾かれてしまう相手に対して、アシュラはさらに火力を上げるのではなく、方法を変えた。剣ではなく拳で対抗すれば良い、と。


 アシュラの対応は早かった。数度弾かれた瞬間に、剣をすぐさま鞘に戻し、無手になった。確かに、斬撃が効かない相手には打撃は有効であることが多いからな。良い手であると思う。


 アシュラは打撃を放ちまくった。とにかく打撃を連打した。それこそ相手に反撃する間も与えないくらいに。


 表面上は然程ダメージを食らっているようには見えないが、どれだけ金ピカの体を持っていようと、生物であることには変わりはない。そして、生物である以上、どれだけ表面が固かろうと中には内臓があり、そこに衝撃が届けばダメージには繋がってしまう。


 アシュラはそこまで分かってやっていたのかはわからない、殆ど本能的なものなのだろう。だが、それでも確実に相手を苦しめる結果となった。


「ゴ、ゴルァあああああ!」


 ゴリラが吠えた、ドラミングもした。しかしアシュラはどこ吹く風だ。ゴリラの口から飛び出る唾液を綺麗に躱し、股も殴り始めた。


 金属には延性と展性というものが存在する。まあ、どちらも似たようなもので、共に金属が伸びるよ、というものである。それアシュラは今、体現しているのだ。相手の体が凹み、伸び、上手く体が動かせなくなった相手をさらにマシンガンのように殴り続ける。


 ドドドドドドドドド


 その音はまるで相手の寿命が逃げていく足音かのようで、相手はみるみると正気を失っていた。


 それほど痛くはなく、ダメージ量は少ないが、体を揺さぶられる攻撃を延々とされ続けるというのはどういう気分なんだろうな。


 そんな攻撃を食らうくらいなら、ちゃんとダメージが通っていた方が良いのだろうか、まあ、その答えは目の魔の瀕死のゴリラにしかわからないか。


 ブシャ


 トドメは相手の眼球にグサリと、二本に展開した剣で同時に潰していた。さすがに目ん玉は金ピカじゃなかったようだな。もしそれだったら、金……ゴホンッ、


『アシュラ、よくやった』

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