第501話 辛抱と策


 何故か爆発性煙幕の中で自由に動けるようになったアスカトルと、こちらも何故か分からないが突如苦しみ出した敵モンスター、その二つのことが同時に起きたことによって、相手は程なく死亡を迎えた。


 バタリ、


「えっ、アスカトル? おい! 大丈夫か!?」


 戦闘が終了し、労いの言葉をかけてやろうと思っていたのだが、俺が口を開く前にアスカトルが倒れてしまった。


 どうやら、相当な無理をしていたようだ。恐らくこの煙幕も本当は食らっていたのだろうな。とりあえず、体力を回復させるか。


「【慈愛之雨】」


 見た目ではわからなかった傷が癒されていった。全く無理しやがって、そこまでして配下の仇を討ちたかったのか。お前は漢だよ、アスカトル。


『ご、ご主人様……』


『おい、無理はしなくていいぞ。よくやった、今はゆっくり休むんだ』


『はい、ありがとうございます……キシャ』


 うん、キシャれるんならひとまずののところは大丈夫だろう。まあ、体力的には回復しているから、気持ちの問題だろうが、それも時間が解決してくれるだろう。


 アスカトルは奇襲、暗殺というスタイルから、常に気を張っておかないといけないから、精神もゴリゴリと削られていたことだろう。今回は本当によく頑張ってくれた。


『それにしてもアスカトル、どうやって相手を苦しませたんだ? 煙幕に関してはお前の状態を見て察したが、それがわからなくてよ』


『はい、それは何度も奇襲をかけている時に、同じ箇所に攻撃することによって強靭な皮膚を貫通し、毒を流し込むことができました、キシャ。しかし、相手が強かったのか、私の毒が弱かったのか、効果が出るまでかなり時間がかかってしまいましたね、、キシャ。

 今度、デト様に毒を頂戴することにいたしましょう』


 お、おう。そうだったのか。かなりしぶとく戦ったんだな。それに、相手はどんだけ毒に耐えたんだよ。体強すぎだろ。まあ、逆に毒があったからこそ、このタイミングで倒せたのかもしれないが。


『まあ、何はともあれ、本当によく勝ってくれた。相手とはお前の天敵とも呼べるほど相性が悪かったからな。それでもお前の執念で勝ちをもぎ取ったのだ。この経験忘れるんじゃないぞ?』


『はい、有難うございます、キシャ』


 それにしてもアスカトルは独自で毒を作ってたのか。それならデトに任せた方がその時間は浮くし、そこは分業にした方が良いだろう。毒担当は絶対的にデトだしなー。まあ、それをアスカトルもわかってたんだろうが。


 あ、あと、アスカトルもデト、みたいに呼びやすい渾名何か付けたいな。アスカトル、アスカトルって連呼していると呼びにくいし、咄嗟の時に短く呼べた方がいいからな。


 うーん、アス? アル? アルカ、アトル、難しいな。

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