第499話 悲痛な叫び


〈Lv.229 ダストパーティカライザー〉


 目を閉じ、静かに落ち着いた様子で座しているモンスターは、呼吸の度にその鼻から赤白い煙を出していた。


 そのモンスターは、筋骨隆々にして、翼が生えており、人型であるために、どこか厳格な雰囲気を漂わせていた。天使とも悪魔

ともつかない見た目であるが、明らかに異形とわかる存在、いかにしてアスカトルが戦うのだろうか。


 どこからともなく現れたアスカトルは完全に相手の意識をすり抜けて背後に近寄り、一刀をその首に振るった。


 ギャンッ!


 しかし、その刃が鮮血に濡れることは無く、強靭な肉体によって阻まれてしまった。


 まさか、それほどまでにこの肉体が堅いというのか。もしやアスカトルの持つ暗器ではあの防御力を突破することはできないのではないか?


 既にアスカトルは退避していた。恐らく、呼吸を止めて奇襲を仕掛けたのだろう。そしてそのままヒットアンドアウェイに持っていくつもりだったのだろうが、思わぬ誤算が生まれてしまった、というところか。


 不幸中の幸いとして、まだ相手が微動だにしていないことだろうか。危険とみなされなかった、と言われれば屈辱であろうが、体勢を立て直し、作戦を練り直す猶予が与えられたと思えばラッキーだ。最後に相手を狩ればいいのだ、その相手の傲慢さにつけ込むのだ。


 しかし、その後アスカトルは何度も奇襲を仕掛けたが、そのどれもが失敗に終わってしまった。


 相手は瞑想でもしているかのような姿勢であぐらをかき、全く周囲の様子を意に介している様子がない。瞑想としてはとても素晴らしい限りだが、如何せん、呼吸するだけで周りに甚大なる被害をもたらしているから見過ごせないんだよな。


 お、アスカトルが何度目かもわからない、奇襲を仕掛けた。完全に気配を殺しており、周りから意識を削ぎ落としているであろう相手には気づかれない攻撃だった。


 そして実際に相手にその刃は届いたのだが……


「グラァアッ!」


 何がその逆鱗に触れたのだろうか、アスカトルは反撃を食らってしまった。アスカトルの方を見向きもしない、見事な裏拳だった。


 これはさすがにアスカトルとは相性が悪いように思える。そもそもこの爆発性煙幕のせいで動きづらいのに、加えてアスカトルの攻撃力を超える防御力、そして奇襲を無効化するような徹底的なカウンタースタイル、これほどまで、というくらいにはアスカトル対策がされている。


 まあ、天然物ではあるだろうが、それにしても主観を抜きにしてもやはり厳しいのではないかと思われる。


『アスカとr『ご主人様! どうか、どうか私に任せて頂けないでしょうか?』


 その声はとても

悲痛に満ちており、悔しさも感じられたが、それでもまだ諦めは感じられなかった。

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