第498話 爺と父と孫
「ゲホッ、ゲホッ! な、なんだこれはっ!?」
俺が何も考えずに突入し、吸い込んだその煙幕のようなものは、俺の体の中で爆発したかのように思えた。
仮に本当に爆発していたとしても、俺の場合が物理攻撃並びに温度によるダメージが無効であるから咳込む程度で大丈夫だったのだが、これをもし仮にチビ蜘蛛ちゃん達が吸い込んだと考えると、全滅したのも頷ける。
蜘蛛に炎は天敵であるし、そもそも虫は動物達の中でも特に、火に弱いのだ。そんな中これを吸っては一溜りもないだろう。現に全滅という過酷な現実が突きつけられているしな。
これは仇を取らないとな。いかにアスカトルの配下といっても、俺の配下の配下なのだ。家族みたいなもんだし、家族だとしたら孫に当たるからな。孫を大事にしない爺はいないだろう。
俺もこのゲームで散々、嫌と言うほど爺をみてきたが、皆、孫は好きそうだった。まあ、いるかは知らんけどな。だから、こそ、俺もここで一肌脱ぐしかないってことだよな!
呼吸を止めて。視界の悪い煙幕の中を突き進んでいくと、やはり一体のモンスターがいた。俺の予想は半分当たり、アスカトルの予想も半分当たってた、みたいなもんだな。となると、あとはコイツを倒せばいいってことだよな? やられた借りはきっちり返すぜ?
「龍k『お待ち下さい! キシャ』
俺がスキルを発動しようとすると、思わぬところから横槍が入った。まあ、横槍といっても愛情に溢れる横槍だからいいんだけどな。どうやら、爺が出しゃばる前に、お父さんが黙ってなかったみたいだな。
『ご主人様、どうか、どうか私めにあのモンスターの相手を任せてはもらえないでしょうか? キシャ。配下の仇、必ずやこの手で果たして見せます! キシャ』
うん、やっぱり、慣れてもキシャ、には引っかかってしまうよな。意識から排除しようとしてもふとして時に詰まってしまうんだよな。まあ、それも個性だから仕方ないし、受け入れるしかないのだが……うん、あとは慣れだな。別に俺だって受け入れてないわけじゃないしな。
『それよりも大丈夫か? 相手はお前の苦手な炎を得意としているはずだ。それでもいくというのか?』
『はい、もちろんです、キシャ』
『よし、ならばいってこい!』
そう言って、アスカトルは闇に消えて行った。闇者のローブを纏って。
しかし、いくら気配を消した所で、息は吸わないといけないはずだ。それをどう対処するのか、見せてもらおうじゃねーか。
煙幕の中心に座し、煙幕を出し続けている張本人は、目を閉じ、静かに呼吸をしていた。
〈Lv.229 ダストパーティカライザー〉
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