第497話 偵察部隊


『全、滅だと!?』


『はい。正確に言いますと、恐らくこの島の中央に向かったと思われる蜘蛛達は皆、全滅しました。キシャ』


『そ、そうか……それはどの方向か分かるか? もしこれがモンスターの仕業だったら報復をしないといけないからな』


『ありがたきお言葉、、キシャ。しかし、私はご主人様が進んで来た道以外のすべての方向に蜘蛛を解き放ったのですが、全滅していない蜘蛛達は皆、この島の海岸に到達しました。そこから私に近い者達は呼び戻し、遠いものはそのまま探索させたのですが、彼らも漏れなく撃沈しております。キシャ。

 反応が最後に感じられた範囲がかなり広範囲に及んでおり、仮にモンスターの仕業だとしても一直線に向かうのは厳しいかと』


 仮にモンスターの仕業だとしても、か。アスカトルはモンスター以外の影響だと考えているのか?


 しかし、モンスター以外の影響っていっても何がある? ペレの如く火山が噴火しまくってるわけでもないだろうし、ん? ペレ? 確かペレがモンスターをボッコボッコ倒している時はほとんどノータイムだったはずだ。それでも時間差はある程度あった。


 もし、それが何十体にも及ぶ雲の群れだとしたら、流石に一撃で全員を倒すことは難しい。流石に天災級の攻撃だったらもしかするかもだが、そんな攻撃があったら嫌でも気づくはずだ。


『なあ、アスカトル、その配下の蜘蛛達はほぼ同時にやられたのか? それとも時間差があったのならその反応が途絶えるまでの時間でなんとか割り出せそうじゃないか?』


『すみませんご主人様、蜘蛛達は皆、ほとんど同じタイミングだったように思えます、キシャ。ですので私はやはりモンスターではなく、何か別の要因があると考えます、キシャ。ここは邪の祠ですから、何があってもおかしくはないかと、キシャ』


 邪の祠には何があってもおかしくはない、か。まあ、確かにアスカトルの言わんとすることも分かる。だがここでいくら考えたところでもう変わらないだろう。ここからは強行突破に出よう。


 最悪俺は死ねばいいし、アスカトルは返してやればいい。


 アスカトルのおかげで注意すべきことがこの先にあることを知れただけでもかなり大きいのだ。


『よし、アスカトルじゃローブをしっかり着用して姿を晦ませておけ、もし、モンスターだった場合は奇襲を頼むぞ』


『了解しました、キシャ』


『よし、三つ数えたら俺は行くからそれと同時に気配を隠すんだぞ。行くぞ? 三、二、一、今だっ!』


 俺がダッシュで奥に進んでいくと、そこには薄赤い、煙幕のようなものが播かれており、それに気づかずに入り、そのまま思いっきり息を吸い込んでしまった。


「ゲホッ、ゲホッ! な、なんだこれはっ!?」

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