第496話 賢王


 ペレが遠距離型の敵を排除した後も、一緒に進んでいたのだが、如何せんペレが強すぎた。


 探知に関しては俺が行っているのだが、俺が相手の所在を教える、または自らが敵を認識した瞬間に相手の命がたたれているのだ。


 まあ、頼り甲斐のあることこの上ないのだが、これが続くとなると少し退屈さを覚えてしまう。だって、すぐにマグマが飛んでいって倒してしまうんだぜ? マグマってそもそも事象として強いから、かなりの敵にクリーンヒットしちゃうんだよな。


『よし、ペレありがとう。お前との道中は一切の不安を感じなかった、本当に頼もしかったぞ。これからもよろしく頼むな』


『ありがとうございます、また何也とお申し付け下さい。いつでも馳せ参じます故』


『お、おう。待っててくれ』


 そうやってペレを返した。次に召喚する従魔はもちろんあいつだな。



❇︎



『召喚頂き、誠にありがとうございます、キシャ』


 召喚したのはそう、アスカトルだ。前までは装備を何もつけていなかったからか、蟲感というか、甲殻が剥き出しの感じがなんとも言えない荒々しさや、不気味さ、人によっては気持ち悪さを感じていたかも知れないが、それが新しい装備のおかげで良い感じに軽減されているのだ。


 ローブで顔も隠れるし、体つきも曖昧になる。とても暗殺者っぽいし、何よりカッコよくなっている。個人的には蟲感が強いのも好きだが、こちらの方がどんな環境にも対応しやすいだろう。潜入とかは流石に蜘蛛のままじゃきついだろうからな。


『ご主人様、如何なさいましょう。普通に進みますか? キシャ』


『んー、そうだな。だが、今いる邪の祠がどれくらいの大きさなのか想像もつかないからな。もし、余にも広過ぎるようなら安全な場所も作らないといけないだろうし……』


『それでしたら、偵察に向かわせましょう。これでおおよその大きさが分かるはずです。キシャ。【配下召喚】、キシャ』


 アスカトルは俺の何気ない一言に反応して、すぐさま対応策を提示してくれた。流石、できる奴は違うな。特にアスカトルは配下を使うことに対して長けている。


 恐らくは経験の差だろうが、使うべきタイミングでしっかりと使うことのできる人材だ。部下をうまく扱えるというのも優秀な上司としての素質だろう。そして、大量の部下を扱えることに決して奢らず自身の鍛錬も怠っていない。本当に素晴らしい逸材なのだ。


 まあ、蜘蛛の王を引っこ抜いたから当たり前っちゃ当たり前なのかも知れないが、王だからといって皆、賢王というわけでもないだろう。人間の世界でもたくさん愚王と呼ばれる者がいる中でこうして強者でいてくれるということは本当にありがたいな。これからもしっかり頼りにして行こう。


 ん? 俺って従魔頼りすぎじゃね? いーや、部下に任せることができるのも主人としての器だな。そおういうことにしておこう。


『ご主人様、報告いたします。配下の蜘蛛たちに偵察も任せたのですが、あるところまでいくと急に反応が遮断されました。恐らく、何者かに全滅させられたのだと……』


 な、なにぃ!?

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