第491話 助言


 今目の前にいるオーガサイクロプスは、たった一度の咆哮で俺の攻撃体制を無に帰すだけでなく、俺にもダメージを入れてきやがった。


 邪の祠で最初に会敵したのがこいつであるならば、こいつが始まりの街でいう、スライムないしホーンラビットということだろう。コイツを圧倒できなければ邪の祠のクリアなんか到底無理だと思わなければならない。


 だが、俺はクリアするんだ。だから、こいつも今ここで倒すしかない!


 先ほどの撹乱作戦はもう使えないだろう。仮に使ったとしても幾らかの微々たるダメージを与えて先ほど同様吹き飛ばされるのがオチだ。


 ならばどうするべきか。相手の様子を見るにどうやら体力が徐々に回復していっている気がする。もしかしてこれが、つい先ほど手に入れた称号の効果にあった、影響を受けている、ということなのか?


 もしそうだとするのならば、邪の祠のモンスターはここにいるだけで自身の体力を回復するという鬼チートな状況だということになるんだが?


 ん? となると逆に俺らは何かスリップダメージなり、デバフなりが食らっているはずなのか? 恐らく向こうの陣営でない者は何か被害を被ると思うのだが、それをしりt


 ッダンッ!!


 っぶなっ! 戦闘中に別のことを考えるのは流石に命取りだな。先ずはこいつから先に片付けるとするか。


 だが、一筋縄でもいかないのも事実。さっきはそれで思考が脇道に逸れてしまったんだしな。ふむ、何か突破口はないだろうか。


 ッダーンッ!!


 こいつの動きは見た目よりかは俊敏だが、それでも速い、というほどではないから、軽々と避けられる。しかし、攻撃を食らわないだけではもちろん戦闘は終わらないからな。何か有効打を見つけなければ……


『じんさま、ご主人様っ!』


 はっ! デト! すっかり存在を忘れてしまっていた。主人としてあるまじき行動だ。目の前の敵をどう倒すか、そればかり考えてしまっていたようだ。


『すまないデト、少し焦って考えすぎてしまってたようだ。今までどうしてただんだ?』


『そうですか、私は甲羅に閉じこもり、擬態を発動してずっと小さくなることでなんとか意識を逸らしておりました。そのせいでご主人様ばかり狙われてしまって……』


『だいz


 ッダーン!


『大丈夫だぞ。むしろ放っておいてすまなかったな』


 俺は今デトを抱えながら全力ダッシュをしている。意外とこいつ重いんだな。


『いえいえ、滅相もございません。それよりもご主人様、今回は新たなスキルや戦術を試されているのですか?』


『ん? 別にそんなことはないぞ? どうしてだ?』


『いえ、これほどの相手、ご主人様が策を弄するまでもない敵かと思いまして……』


 ん? 別に俺は策を弄しているわけじゃないぞ? これが一番効くかと、思っ、、て、、、


「はっ!」


 まさか、従魔に気付かされるとはな。やはりまだまだだな俺は。


『サンキューなデト、じゃあちょっくら倒してくるわ』


『畏まりました』

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