第490話 邪の力


「【隠遁】、【触手】、【吸血】、【鋭俊剛血】」


 俺はぶんしんのじゅつを発動した後に、姿を晦ませ、触手を四方八方に展開し、吸血を使用した。


 どんなにフィジカルが強くても流石に生きている以上、血は流れているはずだ。そして生きていく上で血は必須、その血を抜かれてしまえばどんな堅いサイクロプスでも死に絶えるだろう。


 それに、この触手という遠距離攻撃に加え、このぶんしんのじゅつコンボもなかなか効いているようだ。大体、こういうフィジカルが強い奴は頭が弱いって相場があるし、サイクロプスはそもそも一つ目であるから視覚による錯乱は効果的だ。


 サイクロプスからすると、殴っても蹴っても消えない幻影から何故かチクチクと攻撃され続けるという悪夢のような状況に陥っていることだろう。ぶんしんのじゅつなんて使い道がないと思っていたが、デトのおかげで思わぬ日の目を見れたようだ。


 更に、俺の攻撃はただ血を吸うだけじゃあない。何気に初めて使う、鋭俊剛血というスキルによって攻撃しているのだ。このスキルは名前の通り

速くて強い血で攻撃するというものだが、その実情はかなり自由度が高い。


 血は、液体であるが故に形状を変化しやすい。そして、その性質とスキルの効果も相まって、固めることで相当な強度を誇るのだ。


 オーガサイクロプスからチクチクと得た莫大な血の量、そしてそれを一つに固め大きな大きな血の戦鎚にし、ひたすらに殴打し続ける、それも頭にだ。これは時間の経過とともに巨大化し、硬度も高まっていくのだ。もうそろそろ無視できなくなってきたんじゃないか?


 執拗に頭を狙いつつ、血を吸い、幻影で撹乱する。スキルを使えば流石に俺のほうが有利であったな。邪の祠も大したことはないな。



 と、先ほど戒めたばかりの慢心が心を支配しようとした時、サイクロプスが行動にでた。


「すぅううう、グワァアアアアアアーー!!」


 たっぷりと息を吸い込み、先ほどとは比べものにならない程の咆哮をだした。それによって、デトの毒霧も、俺のぶんしんも一気に消しとばした。


「なっ!?」


 俺がダメージを食らっている!?


 俺のHPはすぐさま回復するが、問題はそこではない、俺がダメージを食らっているということが問題なのだ。


 俺がダメージをまともに食らったのなんていつぶりだろうか。まさか、咆哮、単純な音にダメージがあるとはな……


 目の前のサイクロプスは怒ってはいるものの、総HP量に対してのダメージ的には未だピンピンしている。倒すのはは時間の問題だと思っていたのだが、やるじゃねーか、サイクロプス。



 やるじゃねーか、邪の祠。



 これくらいしてくれねーと、楽しめねーよな!

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