第489話 フィジカル
〈Lv.207 オーガサイクロプス〉
レベル200越えのモンスターか。それもただのサイクロプスじゃない、オーガの力を持ったサイクロプスだ。ん? 一つ目のオーガって言えばいいのか?
身長は俺の三倍くらいあり、確実に俺よりもフィジカル面では秀でているだろう。一つ目なんだが、それ以外はちゃんとオーガでなんというか、違和感が凄い。
まあ、取り敢えず強敵であることは間違いない。細心の注意を払って望もう。これがここで初めての戦闘だ。何が何でも勝ちが欲しいからな、気張っていこう。
「グゥオオオオオーー!!」
サイクロプスは俺たちを視認すると、雄叫びを上げた。獲物を見つけたことに対する興奮か、縄張りを侵したことに対する怒りか、はたまた、自身の強さを誇示しているのか。まあ、誰がどう見ても友好的ではないよな。戦いは避けられないようだ。
雄叫びを挙げた後、相手の初手は突撃だった。手には巨大な棍棒を持っており迫力は凄まじい。
ッダーーンッ!
「くっ……!」
相手の動きを見るのに夢中になっていた俺は行動を取るのにすこし逡巡をしてしまった。その結果、突撃からの棍棒の振り下ろしを直に食らってしまった。
もちろん俺には物理攻撃無効、というスキルの影響によってダメージは一切くらっていない。しかし、相手の攻撃を無効化するわけではないのだ。
つまり、俺はサイクロプスの攻撃により、先ほどまでいた場所から数メートル後方へと吹き飛ばされてしまった。
なんつー、衝撃だ。痛みも感じないのだが、その攻撃の威力はその衝撃から推し量ることは可能だ。しかも、それが殴打によるものならばなおのこと。
「これが、邪の祠……」
俺は心のどこかで、どうにかなるだろう、と慢心していたのかもしれない。プレイヤーだし、死ねることならむしろ死にたいし、俺は俺で結構強くなったし、みたいなことを考えて、最終的にはどうにかなると思っていた。
だが、これほどとはな。明らかに実力の差がある。何をもって実力とするか、それが明確ではないが、スキル、称号を抜きにすればその地力の差は火を見るよりも明らかだろう。
単純に力が強い、ただそれだけでこれほどの脅威になるとはな。恐らく、俺のただの攻撃ではかすり傷にすらならないのではなかろうか。
頭を使うことと同じくらい、強い体を持つこと、も重要なのだと気付かされたようだ。まあ、今まで体を強化する為のSPは悉く修羅の道に溶けてきたからな。
裸の戦いでは絶対に勝てないことは分かった。しかし、実戦とはまた別の話だ。ここからは俺の番だ。一発、良いのを食らった手前、俺もお返ししてやらねーとな!
『デト! 霧を頼む!』
『畏まりました。アシッドミスト』
俺はデトに霧を用意してもらった。これは毒の霧であるからこれ単体でも少なからずダメージはあるだろうが、これはあくまでも陽動、ここからが本命だ。
「【ぶんしんのじゅつ】!」
快晴の下、このスキルを使っても一目で分かる陽動にしかならないだろうが、この邪の祠はただでさえ、暗雲が立ち込め光量が少なく、視界が良くない。更にそれに加えてデトの霧だ。相手からすると一気に俺が増えたと感じていることだろう。
物理で負けるのならば、内から攻めるだけだ。
「【隠遁】、【触手】、【吸血】、【鋭俊剛血】」
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