第488話 先着者


 雨が降り、風が吹き、雷鳴が鳴り響く中、とうとう俺らはその地に降り立った。


ーーー称号《辿着者》を獲得しました。


《辿着者》‥邪の祠に一番初めに到達する。邪の祠にいる時、あまり影響されづらくなる。


 称号を獲得した。よく分からない効果だ。邪の祠って影響されやすい場所なのか? そもそも影響されるってなんだ? 俺以外のプレイヤーがいないから分かんないな。取り敢えず放っておこう。分からないことを考えても無駄だからな。目の前の現実に意識を向けよう。



 明らかに異様、ただただそんな印象のみが受け取られる。大地は荒廃しきっており、草木なんてものは一本も生えておらず、代わりに胞子を撒き散らすキノコばかりが生えている。


 豊穣、の反対を示せ、と言われたら俺は間違いなくこの状態、と答えるだろう。それほど生の活力からは程遠い世界だ。


 ここに一カ月、いや一週間でも住んだら並大抵の人は自らの命を絶ってしまうよなそんか空気感だ。空気が強制的にどんよりするのだ。


 ほら、誰だって雨の日にどんよりとした気分になったことはあるだろう? それは雨という天気がどんよりしているのが原因だとしよう。そうすると、その雨の天気の何倍もどんよりしていれば中にいる人も何倍もどんよりしそうだろ? そういうことだ。


 だが、俺はまだこの地に降り立っただけだ。こんな所でウジウジしてられない。ちゃんと攻略して俺は強大な力を手に入れるんだ。


 パーティはどうしようか、全員突撃でもいいが、最初から飛ばしすぎると、対応できなくなった時が怖い。それよりも小出しにしていく方が得策のように思える。よし、


「デト!」


 俺はハーゲンを返してデトックスを召喚した。まあ先鋒、といえばデトックスだよな。少なくとも俺の中ではそんなイメージだ。新入りだし、相手の様子を見るのに防御型というのは相性が良いし、対応力もある。先鋒としてとても頼もしいのだ。


 それだけではない、これほどどんよりしている天気で空気が悪いとなれば、デトックスという名前を冠している以上、何らかの策があると思ってな。まあ、ダメ元ではあるが。


 まあ、デメリットとして移動時の速度が低下してしまうのだが、まあそんなものは気にしなければ良いというものだ。どうせ初めて来る場所なのだ。ゆっくり探索したいというものだよな。


『デト、大丈夫か?』


『はい。しかし、ここはかなり空気が悪いですね。私もなんとか取り込んで浄化しようとはしているのですが、幾分多すぎるものでして、ご主人様の周り程度しか浄化できません……申し訳ない』


 ん? なんで謝ってるんだ? そりゃまあ、この空気を全て浄化できたらそれに越したことはないが、流石にそれを求めるのは酷というものだろう。


 それに、俺の周りだけでもできることだけでも十分凄いことだからな? 今回はデトを重宝しそうだ。もしかしたら、中央に行けば行くほどこの空気が悪くなる、なんてことは普通に起きそうだからな。


『いや、謝る必要はないぞ。俺の周囲だけでもとてもありがたい。それにこの先もっと空気が悪くなる可能性がある。この状態が維持できるよう、頑張ってくれ』


『畏まりました。慈悲深いお言葉、感謝いたします』


 そんなこんなで、俺とデトの一人と一匹? で進んでいたのだが、とうとう最初の敵を発見した。


 どうやらあれは……サイクロプスのようだ。



〈Lv.207 オーガサイクロプス〉

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