第487話 お気楽な出発


 昨日はまさかカツ丼を作るだけで終わってしまうとは思っていなかったが、カツを注入したことだし、今日から張り切って邪の祠攻略に向かう。


 手元には組長からもらった地図がある。この地図はその邪の祠の場所を指し示しているらしいのだが、


「ん?」


 現在地が分からない。俺が今いる場所ってどこなんだ? こういうのって現在地がなきゃ分からないぞ? 不親切な地図だな、おい。


 まあ、太古からある地図なのだとしたらそんか機能は無くて当然かもしれないし、なんなら地形が変わっているかもしれない。地球の様に大陸移動したかもしれないし、魔法なんてものがあるから、世界大戦なんて起こった日には地図を書き直さなきゃだろうな。


「はっ!」


 閃いたぞ! そういえば俺はいつも目的地に行く時は空路を使ってたよな。そうすれば一目で分かるし、直線距離で行けるからな。


 ということは、その原理をこの地図でも使ってやればいいだけだ。この地図と同じ縮尺になるまで上空に行けば、分かりやすくなるだろう。


 そうすれば俺が今いた位置も必然的に分かるだろうし、そのまま邪の祠に向かうことができるはずだ。


「ハーゲン!」


『はいっす!』


 ハーゲンは最近手に入れた装備のお陰で存在感が増し増しになってるな。翼を広げた時なんて、圧で弱っちい奴なら飛んで行きそうなレベルだ。これぞ、覇気って奴だろう。


『よし、ちょっと上空まで飛んでくれ』


 ハーゲンの豪華な装備に跨っていると、自分がまるで王様にでもなった気分だ。そのまま優雅に上空に上昇していると、自分がいた所が地図上のどこかが分かってきた。


 俺がいたのがヒューマンの国で、瓢箪が連続しているみたいな形だから、恐らくこれだ。ってことは、地図上の左上にある奴だな。で、その下が獣人の国で、邪の祠はヒューマンの国から右下、獣人の国からすると右上の小さな島にあるようだ。


 実際の大きさは分からないが、海の上に浮かぶ孤島、という感じだろうな。


 ん? この二つの大陸が仮にヒューマンと獣人の国だとすると、地図に描いてあるもう一つの大陸はどこの国なんだろうか? もしかしてエルフだったりするのか? それともまた別の種族の国なのだろうか? 


 邪の祠が終わったら今度はそこに行ってみるのもありかもしれないな。


 よし、じゃあ行くか!


『ハーゲン! 出発進行ーー!』


『ラジャーっす!』


 そんな感じで、俺らは近くのコンビニに行くノリで邪の祠へと進路を向けた。



ーーー三分後、


「ん? アレが祠か?」


 そこには、黒い何かで覆われた島がポツンと、海のど真ん中に存在していた。


 場違い甚だしいが、近づけば近づくほど暗雲が立ち込め、瞬く間に嵐の中に入ってしまった。

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