第480話 邪の祠
邪の祠? なんだその禍々しそうな名前は、そそられるじゃねーかよ。
「聞いたことのない名前ですね、是非お聞かせ願いたい」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉ、それは良かった。折角、お金を返して貰ったのじゃ、これで既に知っておるとなると、面目ないからのぅ」
おお、良かった。こういう筋を通してくれるのはこういう人たちの良いところだよな。まあ、だからと言って現実世界で積極的に絡みたいとも思わないが。
「では、話すとしよう。邪の祠というものは、邪を祀っておる場所なのじゃ。元来、祠とは祖先や神を祀るものじゃから、邪神を祀っておるのではないかと噂されてもおるが、真実は分からぬ。邪神なんているのかも分からぬのだからな」
邪神、か。気になるな。どんな姿をしていてどんな強さを持っているのか。
「儂は、ただただ悪がそこにあるのだと思っておる。怒り、悲しみ、憎しみ、恨み、辛み、妬み、嫉み、そんな人間の負の感情が怨念となり、さらに呼び寄せ、渦巻き、坩堝となっているのであるのじゃ」
邪の祠、聞けば聞くほど恐ろしいものなのだな。だが、負の感情というものはとてもエネルギーがある。臥薪嘗胆といった言葉があるように、時には大きな力を生むことがある。壮絶な復讐劇や、身近な所で言うと馬鹿にされて、いじめられていた子が大人になって周りの人を見返した、なんて話もあるかもしれない。
しかし、毎回上手く行くわけではない。いや、上手く行く時は稀、というものだろう。そして行き場を失った感情達が集まり、エネルギーを増し続けているということだろう。
これは面白そうだ、行くしかない。
「俄然、興味が湧いてきましたよ。それはどこに有るのです?」
「ふぉっ、ふぉっ、流石にこれだけでは物怖じせぬか。まあ、それほどの者だということは知っておる。しかし、気をつけるのじゃ、その祠の強大な力におびき寄せられた魔物達がウジャウジャとおる。今まで其方が戦ってきた敵とは比にならぬほどのものだろう。それでも行くというのか?」
そうなってくると、もう行くしかないぞ? 今までの比にならないってどんくらいなんだろうな、凄い気持ちが昂っている自分がいる。
「勿論です」
「ほぅ、即答するか。しかしところでだ、其方は何が為にその祠にいくのじゃ? 儂はまだその祠に何があるのか説明はしておらんのだが」
ん? 何かあるのか? そこにめちゃくちゃ強いモンスターがいるってだけで俺にはいく理由ができてしまうんだが、その先に何か凄いものがあるっていうのか?
「はて、私は強大な敵の存在だけで浮き足だっておりました。そこには何かあるのですか?」
「はっはっはーー! 左様か! 其方は本当に面白い奴じゃのう。それだけで十分というのか、ならばこれは言うことのないことかもしれんのう」
え、そこまで言って無しにするのか? いや、流石に言ってくれないと俺、気になって戦闘に集中できないんだが?
「お、教えてもらえないのですか?」
「ふぉっふぉっ、冗談じゃ、ここからが一番大きな、、そして、怪しい情報じゃ」
大きな、怪しい、情報?
「儂ら、裏の人間達には一つの伝説が大昔から語り継がれておる。それは、邪の祠に到達できた者こそが、儂ら裏の人間の頂点に立ち、そして、強大な力を、その身に宿すことができる、とな」
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