第475話 取引と駆け引き


「あ!」


 俺は今し方、組合の所に戻ってきた。そして、目の前に広がっていたのは……


 今にも息絶えそうな姿に成り果てた獣人達の姿だった。


 そういえば俺、二十四時間拘束する、って言ってそのまま、、あれ? 解除にきてないっけ? 


「あー」


 なんか忘れてると思ってたのはこのことか。これは流石に可哀想なことをしてしまったな。普通にもう死にそうだし、拷問みたいになっちゃってるな。とりあえず回復させよう。


「【慈愛之雨】」


 全員を対象に回復を行った。これで皆、一命を取り留めた所だろう。


 しかし、全員を半殺しいや、九分殺しくらいにまで追い込んだ奴にお金をくれるだろうか? 最悪貸してくれさえすれば俺がしっかり働いて返すのだが……


「おい、大丈夫か?」


 とりあえず、皆を心配していた感を出す。第一印象は大切だからな。


「回復、ありがとうございます。しかし、貴方様への無礼の代償が我々全ての命かと勘違いしておりました。皆、覚悟を決めておりましたが、ギリギリの所で助けに来てくださり本当にありがとうございます。

 貴方様は、我々に死の恐怖と、それが真になんたるか、ということを身をもって我々に学ばさせてくれました。本当に感謝してもしきれません」


 ん? なんか勘違いしてねーか? もともと二十四時間のつもりだったし、そんな死の恐怖とか教えるつもりは一切無かったぞ?


 ふむ、だがまあ、今すぐにでも俺を殺したい、みたいな感情ではなさそうだな。まあ、それが無駄だって身をもって知ってるからっていうのもあるかもしれないな。


 これは思わぬ誤算だが、嬉しいものだ。これならばイケるかもしれない。


「私の意図を汲み取って頂けたようで、嬉しい限りです。ここで、本題に入りたいのですが、少しお金を私に融資して欲しいのです。勿論、そのまま姿を晦ますなんてことはしませんよ? あくまで今すぐお金が必要になった、というだけです。折角ご縁があったのです、ここで一つお金を貸して頂けませんか?」


 俺は言葉は丁寧に、しかし、体から圧を放つことは忘れずに自分の強い意志を表明した。この場にいる人で俺と向かい合ってる爺はそこまでだが、一番外側にいる奴なんかは、チビったよーな顔をしている。良い感じにこちらの意向を伝えることができただろう。


 だが、相手も歴戦の猛者だったようだ。


「ふむ、分かりました。どのようなことにお金を使われるかは分かりませんが、全面的に協力いたしましょう。しかし、こちらにもお願い、というかご提案があります。

 どうか、ウチの愚息を鍛えてやってはくれませんかね?」


 なるほど、お金を融資してくれる代わりに俺に息子の指導をさせるというのか。まあ、それくらいならばいいだろう。


「私に一任してもらっていいのですか? 息子のやる気も関係しますが、大丈夫ですか?」


 俺は指導だけではどうにもならないことがあることを伝え、更には好きにやらせてもらう意向を伝えた。


「無論じゃ」


 それに対して即答。流石は組長と言ったところか。


「分かりました。その頼み、引き受けましょう」



「エクストラクエスト『ウチの愚息をどうか強くしてくれ!』が開始されました」



 ……ん?

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