第474話 とんぼ返り
「ふ、ふむ。魔獣の装備か……」
俺がお馴染みの鍛冶屋に到着し、早速俺の従魔達の装備を作ってもらうよう、頼んでみたのだが、これはどうやら渋いお願いをしてしまったようだ。
「難しいですかね? もちろん、装備を頂く際には必ず代金の方はは支払いますし、もし必要とあらばこちらでお望みの素材を全てご用意いたしますよ?」
「そうか、それならばいや、しかしだな……」
何をこれ以上迷うことがあるだろうか? お金もしっかり払うし、素材も必要なものは用意するんだぞ? これ以上何が足りないというんだ?
「あ、もしかして私がお金を払わないことを危惧しておられますか? もしそうでしたら、先に私の今持ち合わせているお金の全てを出しましょう。それらを前金としてお支払いいたしますので、それならばいかがでしょうか?」
そうだ。俺が本当に払うのか、言葉だけでは信じきれなかったのだろう。この爺さんにも生活がかかっているだろうし、そりゃ何ヶ月も待たされたらキツイよな。
それに装備が完成するまでの期間のことも考えていなかったな。だって、俺の依頼に取り掛かっている間は別の仕事ができなくなるってことだし、そうすれば報酬も貰えないことになってしまう。その上、完成しても払うかどうか怪しい客、となれば渋るのも頷ける。
だから、製作期間中のお金と、完成品に見合うお金、それさえ用意すればどうにかイケるだろう。
ん? これ、お金足りるか? 俺の持ち合わせを払うとか言ってみたけどよくよく考えると、おれ、そんなに金持ってないよな?
「……」
これは少しまずい展開になったようだな。こんだけでかい口叩いている手前やっぱりこんだけしかありませんとか言えない。どうにか速攻で大金を用意しないといけないよな。それも依頼を数回程度じゃ全然足りないほどの大金が。
あ、そうだ。そういえば大金なら持ってそうなアテがあったな。それもつい最近のことだ。あそこに頼めばなんとかなりそうだな。よし、先ずはそこに行こう。
「爺さん、少しの間待っててくれ。少し用事を思い出したんだ。すぐ戻ってくるからそれまでに必要な素材あったらまとめといてくれ。じゃ、また後で」
「お、おい!」
後ろから爺さんの声が聞こえた気がするがそれどころじゃない。ガン無視して俺はすでに目的地へと駆け出していた。
あー、こうなるんだったら、ついでに有金全部巻き上げとくべきだったな。少し勿体無いことをしてしまったようだ。今から行っても、いうこと聞いてくれるだろうか。言うこと聞いてくれなかったら、何か頼み事を聞くか、最悪武力行使だな。個人的には平和的解決を望んでいるがな。
まあ、最初に喧嘩ふっかけてきたのも、途中で俺を捕まえてきたのも向こうからだからな。文句は言われる筋合いはない、はずだ。
そんなことを考えながら猛ダッシュで俺は先ほどまでいた場所へと向かっていた。
大金がたんまりとありそうなヤクザの下へ。
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