第471話 間者


 組員から怪しい輩を捕まえたとの報告が上がった。すると、エルフの可能性が高い。


 しかし、見た目が明らかに違う。エルフといえば乳白色の肌に長い耳だ。それに、緑色を好むと聞く。見た目も緑が多いはずだ。


 それなのにこの男は禍々しい見た目をしておる。確かに肌の色は我々よりも白いがそれもエルフのような乳白色というよりかは不健康さゆえの白さのように思える。


 先程の儂のエルフの間者かどうか、という質問に対しても驚きを包み隠さず出していた。もし、それが事実であるならばもう少し驚きを押し殺そうとするはずだ。


 以上のことから目の前の輩はエルフである可能性は著しく低い。


 しかし、此奴が獣人でないことも確かだ。街の衛兵共を騒がしいようだが、その原因がこいつなのか、はたまた此奴とは別に本当のエルフがいるのか。


 今の若い獣人達の中で実際にエルフを見たことのある奴は少ない。だから魔法を使った時点でエルフと判断したのだろうが、まあ、いい。


「アイツを呼べ」


「はっ」


 息子に聞くのが一番早いだろう。先ずは本人確認だ。


「はっ、父上如何なさいましたでしょう!」


「街で怪しい奴を見つけた。コイツがお前のやられた奴か?」


 ドスと睨みを効かせてそう聞くと、息子は怯えた様子で答えた。相変わらず肝っ玉が小さい奴だ。


「そ、そうでございます!」


「ほぅ、ではお前はこんなエルフでもない、軟弱者に何度も地面に伏せられたというのか!」


「ひぃっ! す、すみません!」


 目の前にいる此奴にやられたのは本当のようだな。しかし、一見たいして強そうには見えぬ。ウチの息子もまだまだとは言え、ある程度は教育してある。そこらの人間に負けるような相手ではない。


 しかし、その息子が完敗したとなると話が変わってくるな。ここは、そうだな……


「組員を全員呼べぇぃ!」


「は、はい!?」


「いいから全員呼べぇぃ!!」


「は、はいーー!!」



❇︎


 ようやく全員揃ったようだな。今揃えられるだけだが、これでも組員数は軽く百人を超えておる。


「おいバカ息子、コイツら全員でアイツは倒せるか?」


「ひっ! た、倒せるかと……」


 ほぅ、これでもまだ自信が無さそうな顔をしておるな。それほどコテンパンにしてやられたということか。それともアイツの強さを何か見てしまったということか?


「おいバカ息子よ、コイツらを全員使うが良い。それでこの男に勝って見せよ。我が一族に敗北の二文字は要らぬ。早く捨て、勝利を勝ち取れ、でねばお前は要らぬ。

 お前らもだぞ! これだけいて負けたとなれば笑い話もいいとこだ。首を討ち取った者にはそうだな……儂の席を譲ろう」



 う、ウウォオオオオオオオオオオ!!


 これだけの活気があれば十分だろう。精々儂を楽しませてくれ。


「あの男の縄をとるのじゃ!」

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