第470話 紋切り型
「スキル【拘束】が選択されました。修練メニューを決定いたします……決定しました。以下のメニューに従って、行動を開始して下さい」
その音声と共に表示されたメニューがこれだった。
・今から二十四時間以内に百人拘束する。
・誰かを二十四時間拘束する。
・十秒以内に十人を拘束する。
「え?」
脳筋過ぎないか? 百人拘束はまだ良いとしても、二十四時間拘束はなかなかシンドいだろ。それなら十秒で十人もかなりだし……
やっぱり国ごと特性とか出てんのか? あんまりこういうステレオタイプな考え方は好きじゃないんだが、ゲームだからありそうだよな。獣人だからメニュー基本的に脳筋にしとけ! みたいな運営の意図があってもおかしくない。
まあ、現実であの国はあーだこーだみたいなこと言ってる人は古いな。殆ど淘汰されたと言っても良いだろう。超高速、超低遅延の回線が世界的に普及した今では、世界の誰とでもリアルで会ってるかのように会話できる。
そんなことを小さい頃からしていると、この世界に向こうもこっちも無いってことに直感的に気付くのだ。まあ、老害どもがまだ世間に対して叫んでるかもしれないが誰も気にしていない。
か、やっべ、そんなことしてる場合じゃねえ。制限時間あるじゃん。でもまあ、二十四時間か一日あればなんとかなりそうだよな。
ん? だが待てよ、よくよく考えて見れば今この国はエルフのスパイがどーこーしてて、自宅謹慎中なんだっけ? そんな中、人を拘束できんのか? やっぱ急がなきゃ。
流石に一世代前のRPGみたく勝手に他人の家に押し入るのは不味いだろうし、更にはそこの住人の獣人を拘束した暁にはどうなるのか、考えるまでもないだろう。
どっかに都合よく悪人でもいねーかなー。悪人なんていくらでも拘束していいフリー素材みたいなもんだろ? そいつら探した方が良いか?
そんなことを呑気に考えてた俺は修練場奥の間から廊下を走り抜け、受付にも一瞥すらせず、そのまま表に飛び出た。すると、そこは、巡回警備員みたいな人が沢山いて……
「あっ、アイツ! ひっ捕らえろ!」
現状の理解もできていない俺は、何故か捕まってしまった。
❇︎
よく分からないまま大勢の獣人に連れられて、気づいたら俺は大きくて立派な屋敷の中で正座させられていた。
え、俺、打首でもされんの? もしそうだったら全力で抵抗するぞ?
「おい! 怪しい動きを見せるな! 殺すぞ!」
むしろ殺せるのであれば殺してほしいという気持ちが強い。最近は死んでいないから尚のことだ。あー、確かにそろそろ死なないとだな。
「おい! 聞いてるのか! 大人しくしろ!」
うぅ、俺じっとするの苦手なんだよな。なんか体を揺らしておきたいし、こんな立派なお屋敷があれば探検したくなる。
「おい! さっきから「待て、もう良い」
また俺が叱言を言われそうになった時、奥からいかにも偉そうな人が出てきた。もちろんその頭部には耳が生えているが、天を突き刺すような角度で生えている。
救われたな。次なんか言ってきたらギロチンカッターの一つでもお見舞いしてやろうかと思ってたからな。
俺を捕まえている奴をいつでもヤレるよう、ギロチンカッターの構えをしていると、偉そうな親分の獣人から、
「単刀直入に聞こう、其方がエルフの間者であるのか?」
え、俺? 俺っすか親分?
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