第466話 親子
「うぅ……ここは? はっ!」
そうだ、俺はあの野郎を追いかけて、ここまで追い詰めて……
その後どうなったんだ? 確かウチのファミリー達を集合させて、全員で襲いかかった所までは覚えてるんだが……何故、みんなやられてる? しかも、アイツが何かしたようには見えなかった。
クソ、何だよこれ。最初は軽い腕試しのつもりだがボコボコにされて、メンツを汚さねぇ為にもファミリーを使って、やり返しに行ったにも関わらず、返り討ちにされたとあっちゃ、親父に顔向けできねぇぞ?
こうなったら、アイツを完全にヤるまでは家には帰れねぇな。幸いアイツは頭が弱いのか、足跡をつけるという愚策を犯しているからな。獣人の前に足跡をつけるなんざ、阿保がすることなんだ……よぉ?
「な、なっ! 足跡が消えてら!?」
不味い、不味いぞこれは。足跡が無いとはどういうことだ? さっきまでは足跡があったのになくなるってことはおかしくねーか? バレたってことか? それに、どうやってここから逃たってんだよ。空を飛んで逃たってんのか? それこそ魔法でも無い限り……
「魔法……?」
確か、俺らがやられた時も直接手を下された感じじゃなかった。気づいたらやられてたって感じだった。つまり、それも魔法で攻撃されたってことだよな?
そして、この足跡消失もそうだ。こんなこと魔法を使わない限りあり得るわけがない。
そうなってくるとだぞ? 魔法は使えても身体強化くらいしか使えない俺ら獣人と、そこそこ使えるがそこそこしか魔法が使えない人間どもが相手では無いってことだ。つまり! アイツはあの魔法に長けているエルフしかいねぇ、そういうことだな!
そういうことなら色々話が繋がる。俺が一対一で戦った時も、変な技ばっかり使ってきやがったからな。最後は変な細長いものを伸ばしてきて、俺から力を吸い取ってきたし、これは紛れもなく凄腕の魔法使いだ。
つまり、あの憎きエルフが俺らの情報を盗み出す為にスパイとして送り込んで来たってことか。
エルフが敵となれば、親父も怒らねぇだろ。むしろ、協力してくれるはずだ。誇り高き獣人の名にかけて、な。
よし、そうなったら今すぐ親父に報告だ!
❇︎
「親父ぃ! 親父はいるかぁ!?」
「ぼっちゃま。お帰りなさいませ、久しぶりのお帰りかと思いましたら、ご主人様に御用ですか。ご主人様はただ今昼の儀を執り行っておりますので、手が離せません。もし私で良ければ、お話を聞きますが……」
「セバスでいい訳ねぇだろ! それに昼の儀ってカッコつけてるくせにしてることはただの葉巻を吸ってるだけじゃねーか! 早く親父に合わせろ! 一大事なんだよぉ!」
「そう言われましても、一日に一本だけの大切な葉巻ですよ、おぼっちゃま。ぼっちゃまも大人になれば分かります」
「うっせー! んなこと言ってる場合じゃねーし、俺は大人になっても葉巻は吸わん! それより、本当に一大事なんだよ! この件はエルフが関わってるんだ!」
「ほぅ、ぼっちゃま、エルフですか。では、急いでご主人様をお呼びいたしましょう」
「だから言ったじゃねーか、早くしろ!」
❇︎
「おい、昼の儀を邪魔したんだ、つまらん用だったらいくら息子とはいえ、殺すぞ?」
「はっ、聞いて驚くなよ親父ぃ、今回はエルフが関わってる」
「ほぅ? 詳しく聞かせろ」
そう言って俺は事の顛末を事細かに親父に伝えた。
「おいおい、そのエルフに負けてお前はみすみすこの俺に助けを求めて来たってことか? 情けねーな、さっさと一人前になりやがれ! このクソガキが!」
「う、うっせー! 今回は分が悪かっただけだ! 次は必ず勝つ!」
「ふん、威勢だけは相変わらずのようだな。だが、本当に相手がエルフで飛行魔法も使えるとなると、流石にお前が相手では厳しいだろう。おい、セバス、皆を集めろ」
「かしこまりました」
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