第464話 若者と謎


「ハァ、ハァ、ハァ。なかなかやるじゃねーか。俺の目は曇っていなかったようだな。クソっもう一回だ!」


 そう言って俺の目の前にいるボロボロの若い獣人は心折れることなく俺に立ち向かってきた。これで計四十六回目だ。何度地に伏せさせたら気が済むのだろうか。


 もしかしたらコイツ俺に勝つまでやるつもりか? それかれこうすることで俺を拘束し衛兵に突き出すという新手の捕まえ方なのか?


 もう何でもいいんだがそろそろ面倒臭くなってきた。自分の実力くらいわきまえて欲しいものだな。


 それに殺さないようにするのも大変なのだ。無駄に体が頑丈なだけに手加減するのも大変なんだ。もう、いい加減分かって欲しい。


「おりゃああああ! まだだこの野郎ー! へぷしっ」


 だからもういいだろう? いまのでちょうど五十回目だ。もうキリよく終わろう。


「おらああああ!」


 よし、終わらせよう。最初からこうしておけば良かったんだ。


「【触手】、【吸血】」


「な、何だこれはよぉ! お、お前化け物だったのか!? くっ……! う、うぅ……」


 バタン


 流石にどんなに勢いのある若者でも血が抜かれりゃ流石に倒れるだろう。死なないくらいの貧血にしておいたからいつか回復するだろう。幸いなことにこの世界には回復魔法ってのがあるからな。


 よし、修練場を探そう。ここに来た目的がそれだしな。それに、ここに長くいると面倒ごとに巻き込まれそうだ。さっさと用事を済ませて帰りたい。


 旅行とかって、時と場合によるけど行くまでが一番楽しいよな、行ってからはなんだかんだホームが生活しやすくて早く帰りたくなっちゃうんだよな。


❇︎


 ……見つからない。この国にはないのか? それとももっと別の場所にあるとかか? 地下帝国では一瞬で見つかっただけに、これだけ見つからないともう、ないんじゃないかって思えてくるよな。


 そうやってトボトボ歩いていると、ふと、ある建物が目に入った。


「「あ!」」


 そこにはなんと、「獣の修練場」という文字が……


 ってえ? なんか俺とはまた別の声が聞こえてきたような、、、


「おいおいおい、それで隠れてるつもりか? 丸わかりだぜお前さんがいることなんてよぉ。それにさっきはいいようにやってくれたじゃねーか。きっちり落とし前は付けてもらうぞ!」


 振り向くと、大勢を引き連れて先ほどの若者がやってきた。どうやら回復しているようだ。それにしても懲りない奴だな、俺と戦って、人数が増えたら勝てる相手だと判断したのか? そりゃ判断が甘すぎんだろ。お前みたいな奴が百人いても勝てそうだ。


 って、そうじゃない、そうじゃない! なんで俺が隠遁を発動してんのに、気づかれてんだ!?


 よくよく考えてみれば、隱遁って姿、匂い、音、気配、全てを隠すんだぞ? なんでわかるんだ? それこそ第六感とか超能力とか言うつもりか?

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