第462話 不法侵入しないと気が済まない奴


 そりゃ、空中でハーゲンに乗ってる時にハーゲンを帰したら落ちるよな。うん。天駆を発動できれば俺が水面に打ちつけられることもなかっただろうが、そんな反射神経もなければ思考回路も無かった。


 うん、まあ、損害が出てないからいいんだけども、なんか嫌だよな、マヌケを晒したみたいで。学校の階段でずっこけた時、誰からも見られてなくても恥ずかしいのと一緒だ。


 すぐさまその現場を離れたくなるのと同様、俺も隠遁を発動して港に向かって泳ぎ始めた。


 その間、水中にいたモンスター達がなんか厳つかったんだがまあ、気づかれなければ喧嘩を売られることもなかった。


「ぷはー」


 全身ビショビショの俺は水面から顔を出し、周囲を確認しながら陸に上がった。滴る水が俺の行く道を示してしまうのだが、程よく乾燥させる便利な魔法なんて持ち合わせがない。


 アイスに水分を凍らせてもらうか、俺の魔法で爆散させるかのいずれかだが、どちらも両極端過ぎるよな。


 というわけで、注意深く見ると大変不可解な現象を巻き起こしながら俺は移動していた。目的地はもちろん、地下帝国にあったような、修練場だ。


 俺の予想では、スキルか、ステータスが上がるんじゃないかと予想している。いい感じに見つかればいいが、それに関しては運だからなー。


「おい、誰だそこに居るのは! 隠れてるのは分かってるんだぞ! 大人しく出てこい、お前は既に包囲されている!」


 え?


 その声の方を向くと、ゴツい体をした毛むくじゃらで尚且つ立派な耳を生やしたおっさん? 犬? がいた。


 包囲されている。と言われた通り、周りをゆっくりと見渡してみると、五、六人同じような獣人がいた。うぇ、ウサギのおっさんってどこに需要あんだ?


 それにしても不味いな。俺は今不法入国している奴なんだよな。獣人と言えば確かにケモミミの子とかは確かに需要があり、拐われたりして人身売買とかされているという背景があるかもしれない。


 それを考えると、不法入国には敏感に、厳重に警備している可能性はある。この可能性を思いつかなかったのは俺のミスだな。


 うーん、それにしてもこの危機をどのように対処したもんかなー。全員ぶっ倒してもいいんだが……


「おい! 聞こえているだろう! 無駄な抵抗をしようと考えるなよ! この数の前ではお前には到底無理だ、しかも俺らを突破したとしても、国を挙げてお前を捕まえる! 大人しく投降しろ!」


 リーダー格のような犬の獣人さんが、爪を光らせながらこちらに向かって吠えている。もうとっくに水は乾いている。恐らく匂いでも判別しているのだろうな。


 んー、逃げる方法も無くはないんだが、無駄な手間をかけさせるのも申し訳ないんだよなー。国を挙げてって、そこまで本格的にすることでもないしなー。


 ってか、この早さで見つかるってことは絶対に前例があったってことだろ。マジでだれだよ前回こんなことした奴はソイツを殴りに行きたいわ。


 よし、


「【天駆】」

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