第451話 特訓内容


 デトックスと人魔一体で合体した後に、デトックスのスキルである擬態を発動することによって俺はドワーフの姿になることができた。


 正直、何故ドワーフになれたのか疑問が尽きない。まあ、ここがドワーフの国であるということ、そして俺が発動したことでスキルの効果が上昇したこと。それらを含めいろんな理由が組み合わさって成功したのだろう。


 でも、そもそも擬態って周囲の環境に合わせて自分を物理的に隠すもの である筈なのに、こうやって概念的な擬態と言うものが成立してしまうとは思わなかったな。


 いや、まあ、発動した時はなんとなくイケるだろ、とは思って軽いノリでやったが、成功した今振り返ってみるとなんでできたのかが不思議になってきたな。まあ、できたからいいんだ。気にしたら負けだな。


 そんなことよりも目の前にある修練場に入ってみよう。ここに入る為に擬態したんだ、折角成功したのに入らなかったら意味不明だからな。


 俺は隠遁を解除して、その中へと入る。


「おじゃましまーす」


 そこにいたのは先ほどもいた受付のドワーフだ。まあ、これで変わってたほうが怖いんだけどな。


「いらっしゃい。ん? 初めて見る顔だね、もう、ここ最近ずっと新入りは見てないからね、嬉しいよ。名前は何と言うんだい?」


 よし、別に疑われてはいないみたいだな。ここで謎のドワーフネットワークみたいなもので門前払いとかされたら嫌だと思っていたんだが、まあ、無事に行ってよかったな。


「ライトと申します。宜しくお願いします」


「ふふっ、随分と礼儀正しいじゃない、ドワーフにしては珍しい性格だね。今日は特訓をしにきたのかい?」


 見た目がドワーフということも相まって、この人がどんな人なのか全く掴めない。声と見た目の感じから女性ということはわかるのだが、年齢がさっぱりだ。正直にいうと、オバさんのように見えるが、ここではもしかしたら若い方かもしれないからな。迂闊な発言はできない。


「はい、特訓所という文言を見て、思わず入ってしまいました。しかし、どのようなことをするのか全く見当もついておらず、少し説明をしていただきたいのですが……」


「そうかいそうかい、なら簡単に説明してあげよう。ここは所謂、称号、を成長させる特訓をするところだよ。

 称号とは、いわばその人を表し、説明する物。つまり看板みたいなものだね。私たちドワーフが一番大切にしているもんさ、あんたも分かるだろう? それをさらに成長させて磨きをかけるというもんさ」


「なるほど、では具体的に私は何をすれば良いのですか?」


「それは奥に入れば分かるさ。奥にある機械に自分の称号を入れることで自動的にそれに見合った特訓メニューが表示されるのさ。それをこなせば見事成長だね。

 ただ、一つ言っておくよ。自らを示す看板とも言える称号、それを成長、進化させることが簡単とは思わないことだね。久しぶりの新人だから言っておくけど、甘くは見ちゃダメだよ。じゃあ、頑張りな」


「はい! ありがとうございます!」


 俺は婆さんからの激励を受けて奥の部屋へと向かった。


 ドワーフって本当に看板が好きだったんだな。そりゃ彼方此方、国の入り口にまであるわけだ。

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