第432話 アスカトルのやり方
麒麟は……キリンだった。
その見た目は、確かに青白く、光を放っており、どこからどう見ても神聖だった。
しかし、その脚、首は共に異常に長く、その圧倒的存在感を示している。顔は見上げなければ視界にいれることも叶わず、そこにいるだけで俺を気疲れさせるほどの相手だった。
アスカトルは大丈夫だろうか。これほどまでに強力な相手に一人で立ち向かうなんて、かなりの負担だろう。
『だ、大丈夫か? アスカトル、』
『はい、全力でぶつからせて頂きます』
『心していけよ』
『はい』
俺の目の前に立つアスカトル、覚悟は充分なようだ。
「ひひーーーーん!」
キリンは高らかに声を上げ、眼下に群がる小蝿を潰すかのように足を持ち上げ、まるで鉄槌のように地面に打ち付けた。
だがアスカトルも動じない。我らの暗殺担当は、影に溶け込むように移動しその攻撃を躱した。いい動きだ、もうあんなの奇襲しまくりだよな。
攻撃を避けられたキリンは、小さい癖に小癪な! とでも思ったのか、更に向きになって、足で踏みつけようとする。
しかし、それすらも全てアスカトルは回避してしまうため、まるでキリンが地団駄を踏んでいるかのように見える。はたまた、太古の洗濯物を洗っている少女のようにも見える。
いや、それにしては足と首が長すぎるな。
まあ、それは置いといて、今、攻撃を繰り出すキリンに対して避けるアスカトルの構図が出来上がっている。しかしアスカトル、避けているだけでは勝てんぞ? 何か攻撃を加えねば。それに、あのキリンはどう見てもVIT多めだろうからなー、これは長い戦いになりそうだ。
そう思った矢先、
ッドッシーーーーーーン!!
キリンが転倒した。
「え?」
え、何が起きたの?
『お、おいアスカトル、お前なんかしたの??』
『はい、このデカブツ目が少々図に乗っておりましたので、地団駄を踏んでいる時に足に糸を巡らせ、足を打ち付けようとした時に糸を引っ張ることで相手の体制をぐらつかせ、空中にある足と同じ側の足に攻撃を加えることで転倒させました』
え……え? アスカトルって、そっち系?
ザシュン!
『ご主人様、任務完了致しました』
再び俺の前に現れた自身に満ちたアスカトルの右手には大きなキリンの生首があった。
『お、おうご苦労さん』
き、キリンってツノが五本もあるんだな。
変なの。
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